壁紙といえば、住宅の中でも様々なトラブルが発生する部分の一つである。
カビや剥がれ、変色、破れなどその種類は様々だ。
トラブルの種類も豊富だが、その原因も様々で中には住宅全体に関わるような重大な原因によって引き起こされるものもある。
その一つが壁紙のひび割れだ。
今回の記事では、重大なトラブルの前兆かもしれない壁紙のひび割れについて原因、見分け方、点検に関する話まで徹底的に解説する。
壁紙のひび割れが気になっている方は是非、参考にしていただき適切に対処していただければ幸いだ。
壁紙のひび割れの原因の一つは壁下地にあり
まずはじめは、壁紙に発生したひび割れの原因について見ていこう。
壁紙は文字通り薄い紙や樹脂系の素材でできた建材の一つだ。
そのため、普段の生活で起こる、水をこぼしたり、壁を引っ掻いてしまったりなど、過度な温度変化、湿気、部分的にかかる大きな力によって簡単にトラブルが発生してしまう。
しかし、ひび割れというのは壁紙だけの問題ではない事がある。
ではどのような時に壁紙がひび割れてしまうのだろうか。
その理由はほとんどの場合が壁紙の下地に関係があるのだと言える。
そもそも、壁紙の下地にも様々なものがあり一般的には
石膏ボード
合板
コンクリート
などが使われている。
石膏ボードとは石膏を下地としてその両面を紙でコートしている下地材のことで、耐熱性、防火性、遮音性、形状の安定性などが高く壁や天井の下地として広く使われている建材だ。
叩くとコンコンと響いたような音がする。
合板とは、薄い木材を何層にも重ね圧着した建材のことで主に、木造住宅の床や、壁、天井など住宅のあらゆる部分につかわれている。
石膏ボード同様に裏が空洞になっていることが多く叩くとコンコンと響いたような音がする。しかし、石膏ボードと比べると粘りがある素材のため、やや重たい響となる点が特徴だ。
コンクリートは鉄筋コンクリート(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)などの壁下地であり集合住宅やマンションなどはコンクリート下地が多い。
先ほど、壁紙がひび割れる原因としてほとんどは壁紙の下地に関係があるケースが多いと説明した。壁紙のひび割れは、壁紙単体ではほとんど起こることはなく上記のように下地がひび割れ、それに伴って壁紙にもひび割れが発生してしまうという仕組みだ。
壁紙のひび割れは、下地のひび割れのサインと思っていいだろう。
では、どのような理由で下地がひび割れてしまうのだろうか。
素材によってその理由は異なるが、石膏ボードの場合、熱や湿気などに強く下地自体が変形してしまうことは少なく、強い衝撃などによって変形、もしくは割れが発生してしまうことが多い。
また、合板の場合は一枚の木材に比べると熱や湿気などへの耐性は強いものの、木材という性質から気候の変化などで変形してしまうことがある。
また、石膏ボード同様に強い衝撃でひび割れてしまうこともある。
コンクリート下地の場合、ひび割れは比較的よく発生するトラブルだ。
原因としては施工時の不備などもあるが基本的には経年劣化によるものが多い。
つまり、壁紙にひび割れが発生する原因は、このような様々な原因によって下地にひびが入り、下地に接着されている壁紙も一緒にひび割れてしまうというわけだ。
もちろん、ひび割れの原因はこれだけではなく何らかの理由によって壁紙だけが収縮、膨張しひびが入るケースや、強い力が部分的にかかりひび割れてしまうこともある。
ひびに見えるが、実は壁紙が浮いて隙間が見えているだけということも多いだろう。
とはいえ、ひび割れの原因としてもっとも多いのは下地の影響によるものだと思って間違いないだろう。
壁紙のひび割れには良いひび割れと悪いひび割れがある
先ほどはひび割れの原因について詳しく解説したが、重要なことは壁紙に発生しているひび割れが”良いひび割れ“か、”悪いひび割れ“か、を見極めることだ。
良いひび割れの場合は、DIYで手軽に補修をしても良いだろう。最悪の場合放置していても見た目が悪いが、大きな問題にはならない。
しかし、悪いひび割れだった場合、最悪の場合、命に関わるような重大な問題にもなりかねないため注意が必要だ。
あなたの家のひび割れが、このどちらのものなのか、判断できるようになっていると、安心だ。
では、良い悪いの判断は何を基準にして言っているだろうか。
それは、単に壁紙と下地だけの問題なのか、住宅全体の歪みからくるひび割れなのか、ということである。
住宅は竣工から少なからず動いているものだ。
特に木造建築の場合、季節によって生じる温度変化や湿度変化によって、木材が膨張、収縮を繰り返す。
また、微妙な地盤の変化や、近くに道路があれば車の通る振動などによって、極わずかではあるが傾いたり、ねじれたりと何かしらの歪みがおこる。
このような、経年変化によって起こるわずかな歪みの場合であれば特に問題にならないが、地盤沈下など急激な環境の変化や、施工ミスなど重大な原因によって歪みが起こり、ひび割れが発生していた場合は注意しなければならない。
このような重大な原因によって住宅の傾きが出ていると、万が一の自然災害の際に住宅の破損や倒壊などが発生しやすくなり、生命に関わるリスクになる。
これらのリスクを排除するためにも、壁紙にできたひび割れを正しく判断し対策を講じることが重要だと言える。
良いひび割れの見分け方と補修
まずは良いひび割れについて見ていこう。
良いひび割れとは、前述の通り住宅全体の歪みではなく、部分的に力が加わることで発生するひび割れのことだ。
例えば、
掃き出し窓などの大きな開口部の上部
部屋の角
下地の切れ目
ものをぶつけるなど外部からの影響によるひび割れ
などが良いひび割れだ。
掃き出し窓やドアなどの大型の開口部付近や部屋の角、下地材の切れ目などは住宅の中でも比較的力が加わりやすく、衝撃がかかる部分だ。
したがって、揺れや小さな振動が積みかさなり壁紙が割れてしまうのだ。
特に新築の木造住宅などの場合は、構造材に使われている木材が乾燥し、しっかりと馴染むまで2〜3年かかると言われており、この間は小さな振動や、収縮による動きが起こりやすい期間でもある。
インターネットなどを見ていると「新築なのに壁紙にひびが入っている。手抜き工事だろうか?」と行った質問が目に入るが、実は新築の時ほど壁紙にひびが入りやすいものなのだ。
また、例えば重たい家具をぶつけたなど明らかに外部から強い力が加わった場合は当然のことながら壁紙に負荷がかかりひび割れが発生してしまうこともある。
小さなお子さんやペットなどがいる場合は、原因の特定が難しいが上記のような理由によって起きたひび割れは比較的良いひび割れと言えるだろう。
ここで紹介した良いひび割れは、自分で補修できる場合もあるので、次に紹介しよう。
コーキングを使った素人でもできる補修
上で紹介してきた壁紙クロス自体のひび割れの場合、壁紙クロスの浮いた部分をコーキングでとめつける方法が最も簡単で、素人でもできるものだ。
壁用のコーキング剤を使って、浮いてしまった壁紙クロスの隙間から入れ込んで、貼り付けるのだ。その際はみ出たコーキングを拭き取る布を準備しておこう。はみ出てしまったコーキングは、すぐに拭き取ることできれいに仕上げることができる。
この方法は、壁紙クロスの継ぎ目が浮いてしまった時などにも使えるので、覚えておくと便利だ。
壁紙クロスだけではない下地部分にあるひびには、コーキングだけでは対応できない。下地用のパテで下地のひびの部分を埋める作業が必要になる。これはできれば業者に依頼したほうがいいだろう。じつは深刻な問題が隠れていることも考えられる。
悪いひび割れの見分け方と補修
続いて注意すべき悪いひび割れについて解説する。
悪いひび割れとは、放っておけない住宅の歪みなどの家全体の強度に関わるダメージからくるひび割れだ。
例えば、
壁や天井の下地の継ぎ目でもない部分のひび割れ
コンクリート下地に出来たひび割れ
築5年〜10年以上の住宅で出来たひび割れ
などは要注意の場合が多い。
壁のひび割れの中でも住宅の構造の歪みや傾きで引き起こされるものは注意しなければいけない。
壁や天井の下地の継ぎ目でもない部分に現れるひび割れは通常の経年変化ではあまり多いものではなく、地震や地盤沈下などで建物がねじれてしまったような場合に発生する可能性がある。
窓やドアなどの開口部の周りなどに、同じ方向に斜めのヒビが入っている場合などは、これにあたる。
また、コンクリートの下地で起こるひび割れは、コンクリートそのものの劣化や、骨組みである鉄筋が膨張・変形するなどの場合に起こるため、コンクリート下地が剥離したり、壁そのものの強度が落ちてしまったりするリスクがある。
また、新築ではひび割れが起こることが多い旨は前述の通りだが、ある程度築年数が経ち住宅が落ち着いたはずの時期に起こるひび割れというのは、何らかの外的要因によって引き起こされている可能性もある。
このようにひび割れには良いもの、悪いものがあるため原因を見極めて対処することが重要なのだ。
マンションやアパートなどの場合は管理組合へ
マンションやアパートなどの賃貸物件に住んでいる場合も、壁紙のひび割れは気になるところだろう。
ひび割れの対処の方法は同じだ。
ただし、補修を行う場合、は注意が必要だ。
賃貸の場合も費用をできるだけ抑えるのであれば自分で補修業者に依頼する(補修したことがわからいレベルの腕の良い業者)または、火災保険活用(損傷が補修内容に含まれている場合)という選択肢も考えられるが、自分で補修業者に依頼するケースは、賃貸契約内容によっては契約違反なる為、リスクを考慮した上でご判断頂きたい。
自分自身で補修を行う場合、補修跡が残ればトラブルとなる可能性が大きい為、賃貸の場合は自分自身での補修はおすすめできない。退去する際、原状復帰の請求に関わってくるからだ。
賃貸物件ではない場合も、管理人、管理会社、管理組合などに相談することが重要だ。
集合住宅のように一体の建物に何家族もが暮らしている場合は、あなたの家のひび割れが、建物の危険度のサインになる可能性もある。管理者への報告はそのサインを見逃さないための一つの方策となるのだ。
深刻なひび割れである可能性が高い場合の対処法
良いひび割れの場合は、必要に応じてセルフリペアなどによって補修を行えば問題ないが、悪いひび割れの場合は、深刻な問題が潜んでいることもある。必ず専門業者に点検をしてもらうべきだ。
壁紙に起こるひび割れは人間でいうところの咳や熱に当たる。
放置しておいても問題ないケースもあれば、大きな病気の前兆であることもある。
もちろん、圧倒的に大した病気ではないことが多いが、万に一つの重病を未然に防ぐためには早期に診断を受けた方が良いことはいうまでもない。
壁紙のひび割れにも同じことが言えるのだ。
具体的な点検方法としては、屋根や、外壁、基礎、内装などを専門の器具で測定し傾きが発生していないかなどを確認し、床下や屋根裏など普段は目にしない部分を目視してチェックしてくれることが多い。
また、基本的には住宅を施工してくれた工務店などに依頼すれば問題ないが、建売や賃貸などで直接の施工者が不明な場合は販売会社や管理会社に問い合わせを行えば業者を紹介してくれるはずだ。
地震などの災害はいつ起こるかわからない。
もし、ひび割れについて少しでも不安要素がある場合は速やかに点検を依頼しよう。
住宅の点検にかかる費用について
最後に住宅の点検にかかる費用について紹介する。
住宅の構造点検にかかる費用は一般的には5万円〜10万円程度であることが多い。
もちろん、どこまで踏み込んだ点検を行うかによっても費用は変わってくるが、どれだけ多くても10万円もあれば点検を行ってくれるはずだ。
ちなみに明らかに構造に問題はなく、内装材のみの損傷に関する点検であれば無料で行ってくれるところがほとんどである。
ここで注意していただきたいのが、一時期ニュースなどで騒がれていたリフォーム詐欺業者だ。
詐欺業者の手口としては、住宅点検などを無料や格安で請負い、床下や天井裏に点検と称して入る。そして、事前に用意した不良物件の写真を見せて工事が必要だと不安を煽り、必要のない工事を高額な費用で受注するというものだ。
住宅の点検にかかる費用は決して安いものではないため、点検を依頼する業者もしっかりと見極めて依頼することが重要だ。
また、築年数が新しい物件の場合、良心的な工務店であれば無料で点検や補修を行ってくれることもある。まずは施工してくれた工務店にコンタクトを取ることをおすすめしたい。
壁紙のひび割れは危険のサインかも? 専門業者に診断を依頼しよう!
今回の記事では壁紙に出来たひび割れの原因と対処法について解説した。壁紙は意外と脆く、簡単に破けたりひびは入ったりしてしまうものだ。
しかし、その中には深刻な問題が潜んでいる可能性もあるひび割れもあることを紹介してきた。壁紙のひび割れの良し悪しを判断し、不安なことがあれば、専門業者や施工してくれた工務店に相談する、このことを覚えていてほしい。
大規模地震や大規模災害のリスクが危惧される中、小さな不安もしっかり取り除き、安心して快適に暮らすことがもっとも重要なことだと言える。
今回の記事を参考にしていただいて、是非、安心、快適に暮らせる住宅にしてみてはいかがだろうか。