日本の住宅のほとんどは南向きに作られている。
日当たりのいい部屋は気持ちがよく、洗濯物もよく乾くので人気だ。
しかし、日当たりがよいということは、その分、フローリングに直射日光が当たって、劣化が早まってしまうということでもある。
なぜ、日焼けによってフローリングが劣化してしまうのだろうか。
フローリングが日焼けしてしまったら、補修はどうすればいいだろうか。
フローリングの日焼け/劣化の症状
多くの恵みを与えてくれる日光ではあるが、毎日強い日差しを浴び続けると、フローリングの水分が奪われ極度に乾燥したり、日に焼けたりして劣化してしまう。
もともと、フローリングの寿命は15年から20年と言われており、ふつうに生活しているだけでも劣化していくものではある。
紫外線によってさらにその劣化が早まると、色あせや変色、フローリング材の表面の毛羽立ちなどの症状が出てくる。
これらの症状は、主に表面の仕上げが紫外線にさらされることで劣化し、その下のフローリング材部分に紫外線の影響が及んで起きる。
色あせや変色が見られたり、板の表面が毛羽立ってきたり、剥がれてきたり、浮き上がってきたりなど、さまざまな症状が出てくるのだ。
このような、日焼けによる劣化が目立ってきたフローリングは、補修することはできるのだろうか。
フローリングの種類別の補修と対処法
日焼けによる劣化の症状の補修は、床材の種類によって対処が違ってくる。まずは簡単に種類別の対処法を紹介しよう。
複合フローリング
複合フローリングは、現在の日本でもっともよく用いられる床材で、安価で使いやすく、デザインも豊富である。
合板など、複数の木製の板を貼りあわせて加工した床材で、表面に薄く削った天然の無垢材などを貼ってあるものが多い。
貼り合わせて積層させているため、無垢材のような伸び縮みがなく、扱いやすい。
表面には、樹脂製の塗料が塗られ、ツヤがあり触るとひんやりしているのが特徴だ。特殊な加工のシートを貼って仕上げているものもある。
こうした特徴から日焼けによって表面が劣化していくと、ツヤがなくなったり変色したり、さらに劣化が進むと、貼り合わせた薄い板が剥がれて浮いてきてしまうこともある。
表面的な劣化の多いことから、早めに対処すれば簡単な補修方法で改善することも可能である。
・表面のツヤの補修方法
複合フローリングの表面にはツヤがある。樹脂製の塗料が塗られているためで、複合フローリングを守る保護の役割をしているし、汚れを染み込ませず落としやすくし、傷がつきにくい。表面の仕上げ塗装の種類によってツヤの雰囲気も違ってくる。
この表面のツヤを改善しフローリングを保護するためには、ニスやワックスを塗ることで補修する。ニスやワックスは市販されているものも多く、自分でも簡単に補修することが可能である。
表面のツヤは、使っているうちにどうしても薄くなり効果が少なくなる。半年もしくは年に1回はワックスがけをして表面を保護するといい。
・張替えが必要な場合
複合フローリングの貼り合わせた板が剥がれてきたり、浮き上がったりするような、大幅な劣化が見られる場合には、フローリング材の張替えが必要な場合もある。
フローリングの床材としての寿命は、一般に15年から20年と言われている。寿命があることを理解して、定期的な張替えを視野に入れることも、美しいフローリングを保つために必要だ。
日焼けによる劣化のみが気になる場合は、窓際の一部だけの張替えも可能だが、全体的な色味や自然な仕上がりにするためには、全体的な張替えを考慮したほうが良いだろう。
無垢(単層)フローリング
無垢フローリングは、1種類の木材から作られているフローリングで、単層フローリングとも呼ばれている。
素材となる木材をそのまま使用しており、その木材の種類は豊富である。ヒノキやナラ、桜など木材の種類によって見た目や硬さ、触り心地も異なる。
複合フローリングよりも比較的価格が高く高級感がある。経年による変化が楽しめ、注文住宅などに使われることが多い。
無垢フローリングは、自然の風合いを活かしたものが多く、木目や色味はそのままのものも多い。保護剤としてステイン塗料を染み込ませていたり、着色されたりすることもある。
日焼けによる変色があり、色が薄くなったり逆に濃くなったりすることがある。
経年による変化を楽しむのが無垢フローリングの醍醐味だが、やはり窓際だけ変色してしまうのは、劣化を感じさせるものである。
・変色の補修方法
複合フローリングと違って、無垢フローリングの場合は、板が浮いてくるなど大きな劣化はあまりない。
そのため、表面的な変色さえ補修できれば問題ないだろう。
無垢フローリング自体は経年で色が変わるものだし、使われている樹種によって、色の変わり方も違ってくる。
無垢フローリングの大きな特徴は表面を削れることだ。無垢フローリングの変色には、ステイン塗装などを施せばいいのだが、そのまま塗っても変色のある部分で色味に差が出てしまうので、サンドペーパーなどで表面を研磨してから塗布すれば、自然な仕上がりになる。
日焼けによるフローリングの劣化を自分で補修する方法
表面的な色あせや変色ならば、比較的簡単に自分で補修することが可能である。
その方法は、ワックスやニスを塗ることだ。クリアなワックスやニスでもごく薄い色あせであれば、目立たなくなるだろう。
また、床用のカラーワックスや、着色ニスを使うと色味を回復できる。
色あせには着色できるニス・ワックスを使う
クリア色ではなく、床の色味に合わせたカラーのワックスやニスを塗ることで、色あせや変色をなくし、ツヤを回復させることができる。
小さな傷や細かい引っかき跡のようなものは、新たにワックスを塗ることで目立たなくなる場合が多い。
・ワックスやニスの選び方
まずは、それぞれの床に合ったワックスやニスを選ぼう。
たとえば、樹脂コーティングされている複合フローリング材なら、水性の専用ワックスで、床の色味に合ったものを選ぶ。
また、無垢(単層)フローリングの場合、ステイン塗料やオイル塗装など浸透性の塗料を保護剤として使うことができる。
床に使われているフローリングの種類がわかる場合は、それにあったワックスやニスを準備する。例えば、複合フローリングであっても、色のついたウレタン仕上げになっているものもあれば、クリアなものもある。
施工会社に聞いて、確認しておくといいだろう。
選択を誤ると、より劣化が目立つことになりかねないし、床材を痛めることにもなるので、しっかり確認したい。
・表面のワックスの剥離・研磨
複合フローリングの場合は、まずはワックスの剥離剤を利用して、古いワックス類を落としておく。汚れも一緒に落とすことになるし、均一な仕上がりのためには、この作業を丁寧にやることが必要だ。
できるだけ丁寧に落としておくことで、後に塗るニスやワックスの吸着が良くなる。
無垢(単層)フローリングの場合、表面が毛羽立っている場合や、変色部分の境目が気になる場合は、サンドペーパーで表面を軽く研磨して目立たなくさせ、表面を整えてから塗っていく。できるだけ広い範囲にサンドペーパーをかけると、境目が気になりにくい。
・ワックスやニスの塗り方
ワックスやニスは、木目方向に沿ってムラのないように塗りしっかり乾かしていく。乾いてから再度塗り直せば、より美しく仕上がるだろう。
塗り重ねることで、色味が深くなるので、注意したい。
また、一部分だけ塗り直すと、ほかの床の部分と差が出てしまうので、できれば部屋全体で塗り直すことが理想的である。
また、基本的に換気をしながら自然乾燥をすることで、乾かしていくが、冬場など気温の低い時には、急激に乾燥してしまい、うまく吸着しない場合もある。選んだニスやワックスなどの注意書きを確認して欲しい。
・自分で補修する場合の費用
自分で補修する場合に必要なものは、
市販のワックスやニス
ハケ
スポンジ
手袋
など、費用は数千円程度で済むはずだ。
日焼け予防で窓際を綺麗に保つ
日焼けによる色あせなどのフローリングの変化は、免れないものだ。
ただし、こまめに表面のワックスやニスを塗り整えておくことで、できるだけきれいに保つこともできる。
表面の問題だけでなく、複合フローリングに、剥がれ、浮きなどが見られるようになると、自力で治すのは困難だ。
専門の補修業者に依頼することになるし、問題が大きければ床材自体の張替えになる。
まずはそうならないために、メンテナンスとともに予防を心がけよう。
南向の掃き出し窓のそばの床は、年間を通して日当たりがいい。基本的に紫外線があたりすぎないほうがいいので、直射日光に当たる窓際には、床にマットを敷くなど、日光が当たらない工夫が有効だ。
また、カーテンなどをUVカット機能のあるものに変える、ガラスにUVカット機能を持たせるシートを貼る。などが予防策として有効だ。
ただし、せっかくの日当たりを有効に使えないのは少々残念でもあるから、こまめにワックス類を塗るなどメンテナンスを欠かさないようにしよう。
賃貸物件の日焼けによるフローリングの劣化は原状回復が必要?
賃貸物件の場合、入居していた人が退去する時に、できる限り部屋の状態を元に戻すことが求められる。このことを「原状回復」と言い、通常の使用を超えるような使用による損傷や毀損があれば、賃貸人が補修などの費用を負担することになる。
それでは、フローリングの日焼けによる劣化は、原状回復の必要があるのだろうか?
住んでいる年数によっても異なってくるが、基本的には賃貸人の責任はない。
原状回復は、通常の使用の範囲内で起こる劣化については、賃貸人の責任を問われない。
通常の使用とはどのようなものを言うのかというと、一般的に考えて普通に生活している状態のことであり、普通に生活していれば、ある程度の汚れや劣化は避けられないことで、それを元通りにする義務は発生しない。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、賃借人が借りた当初の状態に戻すことではないことが明確化されている。いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるのだ。
たとえば、部屋に日差しが当たる場合、どうしても壁紙やフローリングにも多少の経年劣化が発生する。日当たりの良いことは、入居を募る際の好条件でもあるし、天気のいい昼間にカーテンを開けて日差しを取り入れるのは、しごく自然なことである。
そのため、日焼けによるフローリングの劣化は、通常の範囲内に含まれるので、賃貸人の責任にはならないと言える。特に、長く住んでいればその分経年劣化も激しくなるので、住居年数が長ければ長いほど住んでいる人の負担は軽くなる。
ただし、激しい劣化があるにもかかわらず、それを放っておいた場合には、賃貸人としての管理や手入れが悪くて劣化が広がったとされ、善管注意義務違反になるので、補修・修繕費用を要求されることもある。
賃貸物件についてのこうした知識を、自分でもしっかり把握しておくことは重要だ。賃貸契約時には契約内の原状回復義務についても、確認しよう。
入居の際に、すでに劣化が進んでいる場合は、入居前に証拠写真を取っておくことも有効である。
日焼けによる劣化の補修を業者に依頼する場合とその費用相場
簡単な表面の色あせや変色については、自分で補修することも可能であるが、フローリング材の表面がめくれてきたり、劣化が激しい場合は、ぜひ専門の補修業者に依頼するべきだ。
かなり劣化が進んだ状態だから、早い段階で補修業者に依頼することで一部の補修で済む可能性が高くなる。
表面的な劣化でも、内部にまで損傷が進んでいる場合もあり、塗装の塗り直しだけでは改善できないこともある。こういった診断も、一般の方には難しい。
また、もともとのワックスをしっかり剥離するのは大変なことであり、自分で補修する場合、剥離しきれずムラになることもある。自分で補修する場合は、劣化した部分を目立たなくさせると考えた方が間違いない。美しく仕上げたいのであれば、専門家に依頼する方が、確実だ。
フローリングの素材がわからない、表面の仕上げ加工の種類がわからない、という場合も業者に相談することをお勧めする。素材や加工の種類によって、選択する塗料も変わってくる。
美しく自然な仕上がりを求めるのならば、経験豊富なリペア業者に依頼すれば失敗はないだろう。
・業者に依頼する場合の費用相場
業者に依頼した場合、フローリングの色あせの補修費用の相場は、1㎡あたり10,000円〜30,000円ほどだ。
今後も劣化しにくくなるよう、コーティングをしてもらうこともできる。
その場合、コーティングの種類にもよるが、1,000円から3,000円くらいが相場となる。狭い範囲なら数千円で済むし、部屋全体でも1万円から2万円程度できれいにコーティングしてもらえるだろう。
症状によって、補修方法も金額も変わってくるので、必ず見積もりを取って、補修内容を確認するべきだ。しっかりとした説明をしてくれる業者であれば安心して任せられる。
終わりに
日焼けによるフローリングの劣化は、表面的なものであることが多く、自分でも補修することができる。しかし、その仕上がりはやはりプロにはかなわないだろう。一部分だけ補修することによって、却ってその部分が目立ってしまうこともある。
一時的な補修なら問題ないかもしれないが、今後も日焼けによって劣化が進むことは避けられない。複合フローリングの場合は、ある程度年数がたったものなら、思い切ってフローリングを張り替えて、劣化しにくいようコーティングしてもらうのもいいだろう。
それにはまず、信頼できるリペア業者に見積もりをしてもらい、表面だけの補修でいいのかどうか、全体的な張り替えが必要かどうか判断してもらうといいだろう。そのためにも、ネット上の情報やこのサイトを利用して、リペア業者を比較検討するところから始めてみてはいかがだろうか。