フローリングの傷や摩耗。
家具の移動や物の落下により、基剤が剥げてしまった傷は特に目立つ。
DIYブームの中、フローリングの傷を埋めるさまざまな種類の「補修キット」が販売されている。いざ購入して自分で補修をしてみても、時間が掛かる割に仕上がりに満足できないばかりか、逆に傷が目立ってしまうケースも多い。
このような問題を解決するために、フローリングの傷補修の基礎知識及び、専門のリペア業者に補修を依頼した場合の費用と業者選びの方法について解説させて頂く。
この記事を読んで頂ければ、そのフローリングの傷について悩むことはなくなるので、是非とも最後まで読んで頂きたい。その前に当サイトのリペア職人のリペア事例を下記に紹介するので参考頂きたい。
フローリングに傷が…床の傷はどうしたらいい?
新築のときは無傷のフローリングだが、生活する上で傷は避けられない。フローリングの傷といっても、摩耗による擦れた傷、へこみ、色あせなどさまざまな種類がある。
こういった様々な種類の傷は、補修できるのだろうか。
結論を申し上げると、補修は可能だ。ここでは、傷の種類や補修方法を解説して、ごく基本的な内容を紹介していこう。
傷の種類や材質によって工事内容が異なる理由とは?
床に使われるフローリングにもいくつかの種類がある。
それぞれ特徴があり、メリットやデメリットも違っている。それらの特徴に合わせた補修を行うことで、美しい仕上がりとなり、補修した部分も遜色なく使い続けることができる。
また、好みのフローリングの色、時代の流行色などもあり、フローリングの床の色も様々だ。ましてや木目も自然なばらつきがあり、有機的な模様がフローリングの魅力の一つでもある。しかし、逆に補修となるとその木目を再現することは難しい。
床の補修で色を塗るアイテムは、クレヨンタイプ・マニキュアタイプ・マーカータイプなど販売されているが、色の調合は難しく、木目の再現はさらに技術が必要だ。
素人がパテを使った場合、逆に目立ってしまうケースも少なくない。仕上がりのクオリティを追求するなら、プロの専門のリペア業者への依頼をおすすめする。自分で補修するよりも驚くほどキレイに修復可能だ。
フローリングの補修を満足いくものに仕上げるには、経験と確かな技術が必要であり、傷が悪目立ちするような補修をしてしまうと、フローリング自体の張り替えという大きな工事が必要になってしまう場合もあるのだ。
傷の補修の必要性
雨漏りなどと違って、急いで対処する必要がある危険回避のための補修とは違い、フローリングの傷は、できてしまったものの、気になるだけだから補修する必要もないのでは、という考えもあるだろう。
しかし、一度傷がつくと、表面の塗膜が剥がれ、その後の劣化が早くなりかねない。
できるだけ傷が小さいうちに、そしてできるだけ時間をおかずに対処した方がいい場合が多いのだ。
あまり放置せずに、素早く対応することも傷を広げない対処の一つと言えるだろう。
張り替えに比べてコストが大幅減のカラクリ
補修のメリットは、張り替えに比べて大幅にコストを削減できる点にある。時間とコストを限りなく抑えた上で、元の美しさに修復が可能なのだ。
プロのリペア・補修技術は、傷やへこみ、シミを新品同様に補修する。生活に影響するような大きな工事は必要なく、傷そのものの部分をリペアしてくれる。補修にかかるコストと工事の時間を最小限に抑えられる策だと言えるだろう。
リフォーム業者とは異なり、リペア業者はフローリング以外に、家具や建具の小規模の補修も時間単価で依頼が可能であるため、家具屋・建具屋といった専門業者へそれぞれ依頼する必要もない。
見積もり前にチェックする3つのポイント
1. フローリングの材質を確認
2. 傷の種類と補修方法を確認
3. 相場価格を確認
【チェック1】知らないと損するフローリングの材質
フローリングには、大きく分けて「無垢(単層)フローリング」と「複合フローリング」の2タイプが存在する。
無垢のフローリング
無垢フローリングは、単層フローリングとも呼ばれる。自然の無垢材を貼り合わせることなくそのままフローリングとして加工しているものだ。無垢フローリングは使われる木材の種類により、硬さや色味など特徴が異なる。
無垢フローリングのメリットは自然素材ならではの質感と肌触り、香りの良さだ。加えて単層であるから、傷ができても、ヤスリなどを使い、削れば傷のない部分を補修すれば良いので、長い期間きれいな床を保てる。
また、自然素材の特性を生かして、水分をあえて含ませ、凹んだ部分を復活させることも可能だ。
デメリットは、多孔質な材料で、吸湿性に優れているがゆえに、乾燥が進むと収縮や反りにより、すきまができたり、変形したりしやすい。
比較的柔らかいため、補修しやすい一方、水や衝撃による傷ができやすいのでこまめな手入れが必要だ。
複合フローリング
複合フローリングは、合板や集成材の表面に、厚さ約0.5~3mmの天然木や特殊シートを貼った製品だ。メリットは、集成材の強みを生かした反りや収縮のなさであり、形状が安定している。
さらに、フローリングの各メーカーが耐衝撃性・耐摩耗性を上げた商品を展開し、品質改良しているので、年々高機能なフローリングが登場している。
デメリットは、一度傷がついてしまうと、リペア・補修が必要で、無垢材のように水分で回復させたり、表面を削ったりといった補修はできない点にある。
今回の記事では、特に補修に技術が必要な複合フローリングの補修について、紹介していく。
【チェック2】フローリングの傷の種類と症状別補修方法
複合フローリングにつく傷の種類別に、補修方法を紹介する。
症状① 比較的浅い傷
フローリングの表面には、床材塗装膜が施してある。家具や重いものを引きずると、床の表面のワックスや塗料が削れてしまう。
軽い傷なら表面だけの問題なので、ワックスで傷は隠せるが、色が変色している場合は、その傷が原因で、傷みの範囲が広がる可能性がある。
補修方法は、リペア用の樹脂を「ガスごて(コードレスのガス式ハンダごて)」で溶かしながら、数種類の色を混ぜて色を作る。この色合わせが素人には難しい。
少しずつ色を重ね、実物の色に近づけていく。次に、傷に沿って点を繋げるように樹脂で埋めていく。
樹脂を塗った後にそのまま固まると段差ができるので、カッターナイフやコーボルトと呼ばれるプラスチック製の研磨器具を使い、削ぐように平らにする。最後にフローリング用の塗料と筆を使い、木目を再現して完成だ。
下記の動画は、当サイトの経験豊富な職人がフローリングに空いた穴の補修する様子を撮影したものだ。上記の説明をより理解できるので是非ご覧頂きたい。
症状② 内部に汚れが入った変色・太陽光による色あせ
フローリングのキズの内部に汚れが入って黒くなっている場合、樹脂が入らず着色しづらいため、先にカッターナイフの刃で汚れを削って除去する。
あとは同様にコテで樹脂を塗り込んでいき、コーボルト(プラスチック製の研磨器具)を使って表面を平らにする。樹脂だけで傷が消えない場合、ラッカースプレー(シンナー塗料)で色を吹き付け、ホシュールスプレー(塗装仕上げの内装木製品の補修スプレー)で色を定着させて完成となる。
窓際のフローリングは日光が当たりやすく、紫外線により白く変色してしまうケースがある。こういったケースでは、塗装のノリを良くするため、表面のざらざらした部分をやすりで滑らかにする。
次に、ラッカースプレー、またはサンディングシーラー(鏡面仕上げなど木部に水性系ニスを塗るときの下塗り用塗料)を使い、全体を着色していく。
フローリングのピースは明るい木目と暗い木目があるので、数種類の色分けが自然に仕上がるポイントだ。最後に筆を使って木目を描き、ホシュールスプレーなどを拭き掛けて完成。
症状③ 深い傷(落下や家具移動によるえぐれ傷)
木目までえぐれている深い傷は、まずカッターナイフなどを使いささくれ部分を整える。次に、傷を埋めるリペア用のスティック樹脂を、ガスごて(コードレスのガス式ハンダごて)で溶かしながら、数種類の色を混ぜる。薄い色に濃い色を加えていき、色を作る。
ガスごてで溶かしながら、盛り上がるまで流し込み、ドライヤーでしっかりと乾かす。スクレーパーで充填部分を平らにし、ナイロンパッド(研磨シート)を使い、表面の質感や、つやを調整し、最後に筆で木目を描き完成となる。
症状④ 衝撃によるへこみ傷(打痕傷)
木目は残っているが、重いものを落としてできてしまったへこみ傷(打痕傷)。補修箇所をナイロンパッドで軽く擦り、傷を埋める透明の補修用スティックを、ガスごてで盛り上がるまで流し込む。
余分に持ってある充填部分をスクレーパーで擦って平らにし、上から木目を描きホシュールスプレー(塗装仕上げの内装木製品の補修スプレー)などを使い、つやを合わせて完成だ。
この動画は、フローリングの打痕傷を補修する様子を撮影したものだ。是非ご覧頂きたい。
補修の仕上げは、調色して周辺のフローリングの木目を再現
フローリングの傷補修の最終仕上げが、実際に木目を描く調色作業だ。これには特に裏技など無く、筆で地道に色を付けていく作業となる。
リペア用の絵の具を使い、パレット上で色を調整し、少しずつ周囲のフローリングの模様と色を合わせていく。ベテランの職人でも難易度が高く、素人では決して真似出来ない領域の技術が必要となる。
確実に元の姿に戻したいのであれば、その道のプロに依頼するのが懸命だろう。
下記は当サイトのリペア職人が実際に調色、模様描きをしている様子を撮影したものだ。見事な筆さばきであっという間にどこが傷かわからないレベルにまで色をつけていく姿は圧巻だ。
あえて自分で行う場合の道具選び/補修キットやパテ
当サイトでは、住宅の傷のリペアに失敗したくない場合は、「その道のプロに依頼するのがベスト」というスタンスであるが、どうしても自分でやりたいという方も中にいるだろう。
そのような場合は、当然ながら自分で道具を揃えなければならない。
リペアの道具は、専門のショップに行けば誰でも購入することはできるが、非常に高価である。プロで無い限り、そのような費用を払う必要は無い。
穴を埋めるハードワックスや仕上げの塗料などがセットになったものがネットでも購入できる。このようなものを活用すれば、自分でも安価で傷を補修することができる。
但し、高い技術力を要することは忘れてはならない。
パテは、穴を埋める場合などに使えるペースト状の隙間充填材だ。パテは様々な部分に広く使われる材料だから、持っている方も多いかもしれない。補修用の入手しやすいパテもある。
ただし、あくまで充填材であり、フローリングの質感や色は望めないし、パテで補修をしてもかえって目立つことも多いだろう。
どうしても使う場合は、パテ埋め後、調色をするか、ごく小さな傷のみに使うと考えた方がいい。
【チェック3】フローリングリペア・補修の費用相場とは?
フローリングの補修を、リペア専門の業者に依頼する場合の費用相場を紹介する。
無垢フローリングの費用相場
補修価格は、工法や仕上げ、範囲によって異なる。参考までに当サイトの価格表を記載する。業者の技術力や補修方法も異なるので、多少価格差は出るだろう。
補修するフローリングの難易度や、技術が高いほど価格は上がっていく。多くは3万円からが相場である。
賃貸物件で注意するポイント
賃貸物件の場合、自分で補修するにしろプロに補修依頼するにしろ、退去時のクリーニング代が掛からなくなるわけではない。
原状回復の負担範囲は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で明確化されている。一般的に考えて普通に生活していれば、ある程度の汚れや劣化は避けられない。それを元通りにする義務は発生しない。
いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるのだ。
ただし、激しい劣化があるにもかかわらず、それを放置した場合に、賃貸人としての管理や手入れが問題とされて、善管注意義務違反になるので、補修・修繕費用を要求されることもある。
気付かない程度の傷であれば問題ないケースもあるが、大きな傷の場合、自分でDIYする前に、管理会社へ相談した方が良いだろう。
業者の選び失敗しないための究極の一言とは?
専門の業者に依頼する場合、まず見積もりを提示してもらうことになる。
見積もりをリペア業者に依頼する際、フローリングの材質や色、傷の状況を双方共有するのだ。
見積もり段階で、施工業者の過去の事例は必ず確認しよう。
事例が沢山ある業者は、経験値が高く、自分の技術にも自信を持っているはずだ。
また、『この傷を完全に直せますか?』と聞いてみてほしい。
「はい、私の技術であれば問題無く元に戻せます。」と胸を張って答えてくれる業者であれば、間違いは無い。確かな技術があり、責任を持って、クオリティの高い仕事をしてくれる可能性が高い。
まとめ
一般の家庭や店舗でも、ここに傷がなければもっと快適なのに、と内装の景観をあきらめてはいないだろうか。傷は治せないものと思っている方もいたかもしれない。
これまでお伝えした通り、気になる傷があった場合は、専門のリペア業者に相談することができるのだ。
材料と技術さえあれば、自分で補修も可能だが、やはりプロが行った補修作業の仕上がりは素人とは明らかに違う。プロの補修技術を目の前で確かめてみることをおすすめする。