住宅における快適さは、音に影響されることも多い。外部の騒音をどれだけシャットアウトできるか、また、内部の音を不必要に漏れないようにすることが必要になるだろう。
静音性にすぐれた住宅であっても、玄関のドアというものは意外と防音処置が取られておらず、音漏れや、外からの騒音に悩まされる人も少なくない。
そこでこの記事では、玄関ドアを防音にする3つの方法についてご紹介しよう。
玄関ドアから伝わる騒音とは
玄関ドアは、毎日の出入りが多く、家の顔でもある。まさに内と外をつなぐものだ。
そのため、外に最も近い部分をいうこともできる。外の騒音など、音は玄関ドアから漏れることもあるのだ。
集合住宅の場合、隣や上下階の部屋から聞こえてくる騒音については、ある程度は仕方がないと諦めることも多いだろう。
しかし、意外と玄関ドアから漏れて聞こえてくる騒音も多いのである。
壁や天井の対策が難しい時は、玄関ドアの防音対策をしてみてはいかがだろうか。
集合住宅の場合には、たとえば、ペットの鳴き声やピアノなどの楽器から出る音、水を流す音、話し声など、ほかの部屋の音が玄関を通り共用廊下に響き、それがあなたの部屋の玄関を通って響いてくることもある。
あなたの部屋の玄関の防音を考えることは、他の部屋の音が入ってくることも防いでもくれる。
戸建て住宅の場合にも、外の道路の騒音や、家の中の音漏れなどが気になることも多いはずだ。
どんな場合に玄関ドアからの騒音や音漏れが発生するかを確認し、防ぐ対策をすることでストレスのない生活を実現できるだろう。
また、音の問題は、立地や環境によって大きく異なってくる。大きな道路に面している場合は、車の走行音、駐車場のあるマンションでは車のドアの開け閉め、線路沿いなら電車の走行音、また、飛行場の近くの住宅の場合、飛行機が飛ぶ際の轟音は避けられない。
地域によっては、騒音対策に補助金が出るところもあるので、その制度を活用して積極的に防音工事をすることをおすすめしたい。
玄関ドアの防音対策
音の漏れには、伝わり方によって2種類ある。
一つは、空気を通じて伝わる「空気伝搬音」、もう一つは、固体が震えて伝わる「固体伝搬音」だ。
開口部などからの音漏れは隙間を塞ぐことが有効だ。
また、壁や床、ドアなどの固体から振動が伝わり、音が響いてしまう場合、防音シートや防音パネルを利用したり、防音ドアに変更したりする対応も可能だ。ホームセンターなどで販売されている防音カーテンを取り付けるだけでも、効果がある。
ただし、完全に音をシャットアウトすることは非常に困難だ、ということもまた知っておいてほしい。手軽にできる音漏れや騒音への対応は、いくらか軽減する程度だと考えたほうがいいだろう。完全な防音を望む場合には、防音の専門業者に依頼して、対策をしなければならない。
玄関ドアの隙間を防ぐ
玄関から音が漏れてくるようならば、隙間をなくすことから始めてみるといいだろう。
玄関ドアは、きちんと閉めていても上下左右に若干の隙間がある。ドアとしての操作性をよくするためだが、そこから空気の流れとともに騒音も漏れてしまうのである。
防音ドアならば、そういった隙間もきっちりと密閉するように設計されているが、一般的な玄関ドアは、密閉性は低い。
また、ドアの枠には、三方に「エアタイトゴム」という緩衝材が取り付けられている。
このエアタイトゴムが使用頻度や経年により劣化すると、ドアを閉めても隙間ができる原因になってしまう。
エアタイトゴムの交換
玄関ドアからの騒音が気になった時には、まずエアタイトゴムを交換してみるといいだろう。
エアタイトゴムは戸当りゴムとも呼ばれており、ドアを閉める時の音や衝撃を軽減でき、隙間風も防止できるので、まずはゴムが劣化して固くなっていないか、ヒビや割れが入っていないかを確認してみてほしい。
エアタイトゴムは、接着剤等でくっつけている場合もあるが、基本的にはドア枠の溝に合わせてはめ込むようになっている。溝にはめ込まれているだけなので、簡単に引き出すことができる。
古いエアタイトゴムをはずしたら、溝の深さや幅を計測して、溝に合ったサイズの新しいゴムを購入しよう。
エアタイトゴム自体は、数百円で購入できるものであるが、しっかりはめこんで凹凸がないように仕上げないと、ドアの開閉に影響が出てくる可能性もある。
もし、どのサイズのゴムを選べばいいかわからない場合、外したエアタイトゴムの一部をホームセンターなどに持ち込んで、相談してみるといいだろう。
また、自分で交換する自信がないようなら、業者に任せるという選択肢もある。
ゴム自体の価格は安価なので、ほとんどは技術料や工賃として5.000円〜10,000円程度が必要になってくる。一度業者に依頼してゴムのサイズを教えてもらい、交換する手順をよく見ておけば、次回からは自分で交換することができるかもしれない。
防音テープの貼り方
エアタイトゴムを交換してもまだ音漏れが気になるようなら、さらにドアと枠の隙間を埋めるような、ゴム製のものや、スポンジ製などの防音テープ、隙間テープなどを貼ると良いだろう。
安いものなら100円ショップで購入できるし、ホームセンターでも数百円〜2,000円程度でそろえられる。
防音テープを貼る場合、どのように貼ると効果的だろうか。
テープの役割は、隙間を埋めて音を通さないことだ。そのため、ドアと枠の隙間をなくすように貼ることになる。ドアの場合、最も大きな隙間はドアの下の部分いわゆるアンダーカットだ。
ただし、玄関ドアの場合は、外と内をつなぐ場所のドアであるため、室内のドアとは少し構造が異なっている。
足もとには、外側のポーチなどの床と、玄関の床に段差があることが多いため、必ず沓摺(くつずり)と呼ばれる枠が入っている。そのため、室内ドアほどは、ドア下に大きな隙間はないはずだ。
このような玄関ドアの、防音のためのテープを貼る場合には、玄関ドアの小口部分に追加するといいだろう。
テープを貼る場合には、テープの厚みを隙間に合わせて選択する必要がある。どのくらいの隙間があるかは、そのドアやドア枠によるので、あらかじめ隙間の部分を採寸しておく。
ただし、開閉がしづらくなると、かえって使いにくいため、いくつか購入してみてぴったり防げるものを試してみる必要があるかもしれない。
ドア本体の防音をDIYで高める
隙間を防ぎ、空気伝搬音を止める他に、固体が震えて伝わる固体伝搬音を防ぐため、ドア本体の防音性を上げる工夫もできる。ドアの厚みを厚くし、重みを持たせて振動を抑えるイメージだ。
ここではDIYで可能な方法を紹介しよう。
カーテンを使って音を遮断する方法と、防音パネルなどを使って音を防ぐ方法だ。
高機能カーテンで防音・防火も
玄関ドアにカーテンをかけることで、防音の効果を高める方法もある。
通常、カーテンは窓などにかけるが、玄関も同じく開口部だ。開口部の内側に防音効果のあるもう一つの層を作ることで、音の問題を軽減する。
カーテンを設置する場合には、できるだけ隙間を減らすため、プリーツがなくフラットなものがよく、玄関ドアよりもひとまわり大きくかけるといい。
防音カーテン自体は、遮光性や断熱性を持っているが、防音に追加して防火・防炎性能もついているカーテンもあるので、活用するといいだろう。
防音シート・防音パネルをマグネットで取付け
防音シート・防音パネルも活用できる。
防音シートやパネルにもいろいろな種類があるが、鉛のシートのような重さのあるものやグラスウールなどの吸音材を使用したものがある。
防音シートや防音パネルは、そもそも壁や天井などに設置するために作られたものが多い。自分でドアのサイズに合わせてカットをして、ドア本体に貼り付ける。オプションでドアの形にオーダーすることも可能なものもある。
ただし、鉛を使用したものなどは重さがあり、その重さで音の伝わりを断つが、ドア自体や蝶番に負担がかかってしまうおそれもあるので、十分な注意が必要だ。防音を重視しすぎて、玄関ドアが重くて動かない、動かすと蝶番に負担がかかり壊れてしまう、といった事態も考えられる。
玄関ドアは開閉しないと意味がないから、重いタイプの防音シート・防音パネルを選ぶ場合には十分に注意したい。
防音シート・防音パネルは、厚さや材質により多少差があるが、ドアに合わせた面積ならば、数千円〜10,000円以内で購入できるだろう。
自分で設置するのが難しい場合は、業者に依頼することもできる。
金属製のドアの場合は、クギや画びょうで防音シート・防音パネルを取り付けることができない。両面テープで留めたり、マグネットなどで貼り付けたりする方法を検討してほしい。
ただし、両面テープで貼り付ける場合、剥がすときに、ドア表面の化粧部分も剥がれてしまうこともある。特に粘着力の強いテープは十分に注意する必要があり、時間が経って剥がれにくくなっているところを剥がすことになると、ドアの表面を傷める危険性があるため、注意していただきたい。
特に賃貸物件の場合には、マグネットを利用するようにするといいだろう。
防音対策は、必ず効果が出るとは限らない。騒音が室内に入ってくる原因を、しっかり取り去れるか、どうかはDIYでは難しいことも確かだ。
できるだけ費用をかけずに防音対策したいなら、まずは、厚手のダンボールなどを玄関ドアに貼り付けてみるのもいいだろう。もちろん、騒音の種類にもよるが、軽減されることもある。
ダンボールで少しでも効果があるようなら、専用の防音シート・防音パネルを検討してみる価値はあると言えるはずだ。
防音性の高いドアにリフォーム
ここまでご紹介してきた対策は、高い防音効果を得られない場合も考えられる。
可能であるならば、普通の玄関ドアを防音性の高いドアに取り替えることが、もっとも効果的である。
防音・遮音性の高いドアは、材質や構造にもよるが、内部に遮音材が詰まっていて、音を伝えにくくなっている。隙間の対策もされており、これまで紹介してきた、玄関ドアの音の漏れ・騒音対策を盛り込んだ一体型の製品になるのだ。また、防音性能の評価試験なども行われていて、前もって効果が判断しやすい。
玄関ドアを防音性の高いドアに取り替えるだけで、騒音が30db程度は緩和できると言われている。
防音ドアは、隙間をなくして密閉性を高めてくれるので、防音性だけでなく断熱性にも優れている。
防音ドアに交換する場合には、専門の業者に必ず相談して欲しい。しっかりとした防音効果を得るためには、専門業者による施工が欠かせない。防音ドアの価格は200,000円〜250,000円程度、ドアの交換にかかる費用は、撤去費用・取り付け工事と合わせて50,000円前後が相場となる。
工事にかかる日数については、既存のドアの取り外し、玄関周りの養生、下地補強、防音ドアの取り付け、コーキングなどを施して1日で完了することが多い。
ただし、それぞれの事例で、違いがあるから、事前にしっかり相談と確認をしておこう。
また、玄関ドアを交換するだけでなく、玄関と居室の間に新たにドアを設置すれば、さらに防音性は高まるはずだ。
賃貸物件の場合はどうするか
ここまで見てきたように、玄関ドアの防音性を高めるための工事は、簡単なものからドア本体の取り替えまで、様々なものがある。
賃貸物件の場合には、借り主である住まい手が、自分の都合だけでリフォームをすることはできない。
また、防音性を高めたいと安易に自分で施工してしまうと、玄関ドアや枠、壁などを傷つけることになり、原状回復の際に修理費用請求される可能性が大きい。
簡単な隙間を塞ぐ対策で改善されないようであれば、管理会社や所有者に騒音対策を依頼するべきだろう。
まとめ
玄関ドアの防音にもっとも効果的なのは、防音性の高いドアに交換することである。
しかし、すぐに交換できない場合もあるだろうし、賃貸物件の場合には、一般的に賃貸している住民が勝手に物件のドアを交換することは難しいだろう。
防音に対処する場合には、キズを付けたり、穴を空けたりせずにできる対処方法に限られる。
まずは隙間を埋めること、次にドアに厚みを持たせること。
この2つの対策で、防音ドアの性能に近付けることは可能である。
今では、簡易的で便利な防音グッズが安価で豊富にあるので、自分でできることから始めてみてはどうだろうか。
本格的な防音を望むならば、業者に依頼するのもいいだろう。
少しでも騒音の悩みから解放されるように、いろいろと試しみてほしい。