お気に入りの座り心地の良いソファは、生地がボロボロになってきてもなかなか手放せないもの。ソファを買い換えることなく使い続けることはできないものだろうか?
ソファ自体が壊れておらず、まだ使えるようなら、表面を覆っているカバーを張り替えれば使い続けることは可能であると言える。
しかし、ソファのカバーを張り替えることは、容易に行えるものなのだろうか?特に革張りソファは値段も高く、デリケートでメンテナンスも大変なもの。お気に入りのソファを維持するためにできることを考えてみよう。
革張りのソファの張り替えは可能か
天然の本革で覆われたソファは、高級感があり、その手触りや色味、ツヤなどの風合いが高級で丈夫であることから、高価であるが、人気の家具である。
また、合成皮革を使ったソファは、手頃な値段で、手に入るし、手入れも比較的簡単だから、使っている方も多いだろう。
革張りのソファの張り替えは可能だし、補修も可能だ。
ただし、DIYでできることはごく限られていると考えて欲しい。
特に本革の場合は、専門業者による張り替えや補修を行うまでの一時的な応急処置と考えるべきで、まずは日常の手入れをしっかりしながら使って欲しい。
まずは本革のソファについて、その特徴を知っておこう。
本革は、合成皮革などと比べて丈夫で、ホコリやダニが付きにくいという利点もある。適切なお手入れを続けていれば長持ちし、使い込むことで風合いも増す素材である。
しかし、水や汗に弱いという弱点もある。メンテナンスを怠ったり濡れたまま放っておいたりすると革が傷んで劣化が進みやすいなどデリケートな面もある。
<ソファに使われる本革の種類>
本革の革張りソファと言っても、革の種類やなめしの方法などによって状態やお手入れ方法も異なってくる。大まかな種類を知っておこう。
革の種類は、牛や羊、馬、山羊、鹿などがあり、風合いが異なる。
また、なめしの方法によって
塩酸クロム塩を使用した「クロムなめし」
植物から抽出したタンニンを使用する伝統的な「タンニンなめし」
などの種類がある。
また、表面に施した加工によっても分類される。
たとえば、
タンニンなめしの後、表面に加工を施さない「ヌメ革」仕上げ
仕上げにオイルを塗った「オイルレザー」
染料を染み込ませて色付けする「染料仕上げ」
表面に顔料を塗って仕上げた「顔料仕上げ」
などの種類がある。
表面に加工を施さないものは、革の質感や風合いを楽しむことができるが、キズやシワが目立ったり、特に水が染み込みやすかったりと言ったデメリットもある。
また、顔料などで仕上げたものは、革本来の風合いは感じられにくいが、表面の耐久性が強く直射日光や水分などにも比較的強いという利点がある。
続いて、革張りソファのリペアや補修を見てみよう。
革張りソファのリペア・部分補修
革張りのソファでのリペア、補修したい部分の多くは、小さなヒビやほつれの部分補修ではないだろうか。使っているうちに、角の部分がほつれてきたり、経年で表面の革にヒビが入ったりすることがあるはずだ。丁寧に使っていてもある程度の変化が生じるのは致し方ない。
こういった小さな部分の補修は、色をつけて隠すことができる。
ただし、傷自体は治らないし、美しい仕上がりになるとは決して言えない。
あくまで「傷を隠す、目立たなくする」だけだ。自分で行う補修には限界があるのだ。
クリームタイプのもの、ペーストタイプのものなど、革のカラーリペアの商品は色々と出ているので、補修するヒビの部分の大きさやソファの色などで、使いやすいものを選ぶといいだろう。色を混ぜるなど自分のソファに合わせて調整をして、塗ることもできる。目立たない場所で、色合わせをしてから傷に塗って目立たなくさせるのだ。
補修シートで破れをDIY
繰り返しになるが、自分で行う補修は、応急措置と考えて欲しい。
天然の本革でも水分や油分が足りないと、使っているうちにひび割れ、破れてしまうし、合成皮革も、特によく使う部分がひび割れてくる。場合によっては破れてしまうこともあるだろう。
そういったときは、合成皮革のソファであれば、あくまでも応急処置として補修シートを使うといいだろう。
補修用の薄い透明のシート、もしくは黒や茶など色のついた接着シートを貼るだけだ。ただし、これはご想像の通り、破れた部分をシートで隠すだけなので、美しい仕上がりとは言いづらい。
普段使っているソファで破れが体に触れて不快な場合などは、応急措置として使えるはずだ。
ただし、本革の場合、補修シートはすすめない。本革自体が伸びるし、呼吸をすると言われている。長くはっている状態になると、そこが引き攣れて新たな破れの原因にもなり、周囲の革も傷めてしまうでやめたほうがいい。
本革の場合は、専門の業者に頼めば、革の張り替えではなく、革の部分の傷の補修やクリーニングで、美しく再生することも多いので、自分では行わず、業者に頼んで欲しいのだ。
頼むのは面倒とか、費用がかかるといったこともあるが、本革の経年変化を長く楽しむには、一番の方法だ。
本革のソファを育てていくような感覚で、補修を頼んでみてはどうだろうか。
革張りソファの寿命と耐久性
革張りのソファの寿命や耐久性はどのくらいあるのだろうか。
本革の場合は、10年以上持つと言われている。革用の保湿クリームを定期的に塗るなど手入れをすることで、30年以上使用することもできる。
普段のお手入れの仕方次第で、長く楽しめることが本革のソファの一番の特徴であり、経年変化を楽しむことができる。
合成皮革の場合は、5年から7年ほどで、表面の合成皮革が毛羽立ち、剥がれ出すことになる。本革と比較すると寿命は短いと言えるだろう。伸びもないし、手入れも中性洗剤などで拭くこともできるので、気軽で簡単といえる。小さな子供がいる場合などは、最初は合成皮革で、その後本革に張り替えるということも可能なので、ライフステージによって使い分けてもいいかもしれない。
革張りソファのお手入れ方法
本革のソファのお手入れ方法を紹介しよう。
合成皮革の場合は、そもそもビニル系の素材だから、お手入れにはそれほどデリケートなことはなく、水拭きも可能だが、本革のソファは、もう少し気をつける必要がある。
なめし加工の違いによって、お手入れ方法も違うので、参考にしてほしい。
本革に水は天敵である。水や液体をこぼしてしまったら、すぐに拭き取るようにし、軽く叩くようにして水分を取り、あまり強くこすらないようにする。
また、天然の革だから、人間の肌と同じように、保湿をしてあげると柔らかな風合いが保てる。革用の保湿オイルを定期的に塗るといい。
一度染み込んだ汚れは取りにくい。ソファには皮脂や汗、整髪料などがつきやすいものだ。だから定期的に革用のクリーナーで汚れを拭き取ってやるといい。
冷暖房器具の吹き出し口などの近くにはできるできるだけ置かないほうがいい。乾燥が進むし、温度変化も激しくなり、革へのダメージになってしまう。
・クロムなめし加工の革張りソファの場合
クロムなめし加工の革張りソファは、直射日光に弱いので、ふだんからあまり太陽光にあたるところに置かないようにしたほうがいい。色が抜けたり、革がごわついたりしてしまう。
もし、窓際に設置する場合は、カーテンなどで直射日光を遮るようにしたほうがいいだろう。
・表面に加工を施さないヌメ革仕上げのソファの場合
タンニンなめしのヌメ革は、表面に塗装や染色などの加工が施されていないので、キズや変色しやすいものである。
しかし、タンニンの成分が紫外線に当たると、変化して色が濃くなってくる。加えて革の内部に含まれた油分が表面に染み出てきて、独特の風合いが見られるようになってくる。その油分が、保護膜となってくれる。
だから、ヌメ革のソファを購入したら、まず日光に当てることもお手入れの一環である。もちろん、直射日光に当て続けては、乾燥してしまい表面にヒビが入るから、適度に様子を見ながらがいいだろう。
また、その後はヌメ革専用のオイルを塗っておく。表面の加工がされていないから、水分や油分がしみこみやすいため、保湿オイルをしっかり塗っておくと効果的だ。定期的にオイルを塗るようにし、汚れたときは専用のクリーナーを使用すれば、長持ちさせることができるだろう。
・革張りソファの張替えについて
本革の革張りソファは、汚れたり古くなってきたりしたら、張り替えることも可能である。革張りソファはその種類にもよるが、値段が高いので買い換えるよりは張り替えることでできるだけ費用を抑えて長く使い続けることが可能になる。
本革は、使っていくうちに伸びが出るので、よく座る座面などは、伸びてシワが寄ってしまうこともある。そんな時も張り替えをすれば、スッキリさせることができる。
ただ、革張りソファの本革を素人が扱うことは非常に難しく、本革自体も高級品であることから、自分で張り替えることは不可能であると言える。革張りソファの張替えには、信頼できる業者に依頼するようにしよう。
業者に頼む張り替えと補修
革張りのソファの張り替えや補修は、是非専門の業者に依頼してほしい。
より長く使うための大切なプロセスだ。
傷などの症状によっては、張り替えと思っていたものが、クリーニングで済むといったこともあるのだ。だから、まずは症状の相談をして、どういった補修が可能なのか、補修の内容と見積もりを確認してほしい。
<業者に張り替えてもらう時の注意>
ソファの張り替えや補修は、その材質やソファの種類、大きさなどによって料金が大きく異なるものである。また、補修業者の営業所で張り替えできるものと、工場まで持ち込まないと張り替えできないものもある。補修についても同じだ。
その場合、工場までの輸送費なども加算されるので、一般的な張り替え料金以外に費用がかかる可能性があることも考慮しておいてほうがいいだろう。
家具の補修やソファの張り替えや補修を行う業者はたくさんあるので、腕の良い業者を選ぶのはもちろんのこと、なるべく多くの業者に見積もり依頼をして、そういった輸送費なども含めた費用を算出してもらうべきである。
業者に張り替えてもらう場合の費用の実例
革張りソファの張り替え費用は、種類や大きさだけでなく、業者によってもさまざまである。ここでは、いくつかの実例をご紹介して、ソファの張り替えにかかる費用の相場として参考にしてもらいたい。
・半革張り長椅子の総張り替えにかかる費用
*幅:180cm程度
*工場にて補修、6週間程度、総張り替え
*革張替え費用(ウレタン交換含む):190,000円
*運搬料:8,000円
*合計:198,000円・半革張り長椅子の座面張り替えにかかる費用
*幅:190cm程度
*工場にて補修、6週間程度、座面のみの張り替え
*革張替え費用:110,000円
*運搬料:8,000円
*合計:118,000円・本革1人掛けソファの張替えにかかる費用
*幅:100cm程度
*張替え作業代:60,000円
*本革生地代:80,000円
*合計:140,000円・本革2人掛けソファの張替えにかかる費用
*幅:160cm程度
*張替え作業代:80,000円
*本革生地代:130,000円
*合計:210,000円
本革ソファの張り替え費用相場
これらの実例から、一般的な1人掛け用の革張りソファの張替えには15万円程度、2人掛け用の革張りソファの張替えには20万円程度が相場になると言えるだろう。また、座面のみなど一部の革張りだけを張り替えて費用を抑えることも可能である。
しかし、その場合、背もたれ部分などと同じ種類で同じ色味の材料が確保できることが前提になるだろう。運搬料が別途かかるところもあれば、作業代と生地代が別の所もある。
計算方法が異なれば、張り替えにかかる費用にも差が出てくることもあるので、全体的な費用だけでなくその内訳にも目を通して納得できる業者を選ぶようにしよう。
・合成皮革や布張りに変更も可能
合成皮革や布張りであれば、大きなソファでも張替えは10万円以内に収まることが多い。本革の質感や高級感も魅力ではあるが、一旦別の上張りに変更してみるのも、インテリアの変更として新鮮さを取り入れることに効果的であるとも言える。
逆に、これまで布張りや合成皮革だったものを本革に張り替えることで、ぐっと高級感の増す家具へと変身させることもできるだろう。
まとめ
本革のソファは、大事に使って定期的にメンテナンスすれば、丈夫で長持ちできる優秀な家具である。ただ、そのメンテナンス方法は革の種類やなめしの方法によって違いがあるので、最初によく確認しておく必要がある。
お手持ちのソファがどんな素材なのか、どんなお手入れをすべきなのか、見た目だけではわからないことも多いので、しっかり把握しておくのだ。
キズが増えたり劣化が進んだりしてからでは、張り替えに大きな費用がかかることもあるので、購入時の家具店でしっかりお手入れ方法を聞いておこう。よくわからない場合は、補修業者にメンテナンスを依頼して、自分でできることを教えてもらうことも日常のお手入れに役立つだろう。