一般的に風呂は10年を経過すると傷みだすといわれている。浴槽に浸かるにせよシャワーを浴びる場合でも浴室は高温多湿になるので、最もダメージを受けやすい環境といえる。
マンションの浴室の場合、窓がなく通気できない場合もある。浴室が傷んで水漏れが起これば下の階の住民などご近所に迷惑をかける恐れもある。トラブルが発生する前にリフォームを考える人も多いだろうし、トラブルが発生したら即座に直したいと考える人が大半である。
今回は、マンションの浴室・浴槽のリフォームについて解説する。浴室のダメージの中にはリペアで補修できるものもある。最後まで読んで快適な入浴の一助にしてもらいたい。
マンションのお風呂の種類を知る
風呂は、大きくわけて3タイプに分類される。リフォームやリペアを考えるなら知っておくと後で役立つはずだ。
また、現在使っている風呂のタイプを知ることで、どのようなリフォームにするか参考になるので解説する。
ユニットバス
ユニットバスは近年のマンションで最も多く使用されている。現場ではなくメーカーなどの工場で作られた、組み立て式の部材を現場で組み立てる仕組みの浴室だ。
床や壁・天井が一体化しているので、マンションで一番心配な水漏れがほとんどない。また、断熱性も高いのでヒートショック対策に役立つメリットもある。
ハーフユニットバス
ハーフユニットバスは浴槽と床、そして壁の一部が一体になっているタイプだ。壁や天井を自由に仕上げることが可能であり、自分好みに意匠を凝らした浴室に仕上げると入浴も今まで以上に楽しみになるだろう。
また、ユニットバス同様、水漏れの心配がほとんどないことも大きなメリットである。
在来浴室
古いマンションでよく採用されていて、現在も一部の新築マンションで採用されている完全オーダーメイドの浴室である。
それぞれの、間取りにあった形や大きさで作るので余分なスペースがなく最大限に浴室の広さと高さをとる事が可能だ。
また、自分好みの部材を使い、自分好みの浴室に仕上げることができるので、特に風呂好きの人に支持されている。
浴室に使われる素材
浴室は、マンションの部屋の中で最も湿度が高くなり、水滴などの水分がつく場所である。故にカビが生えやすく不衛生になりがちなので、衛生的な素材が使われている。浴室に使われる素材を知り、リフォームやリペアに役立てていただきたい。
壁・床・天井に使われる素材
- タイル:古くからよく使用されていて、銭湯でもよく見られる素材である。カラーバリエーションや柄も豊富なので、リフォームの際には意匠を凝らしやすい素材だ。ただし、保湿性が低く目地に水分が残るとカビが生えやすいのが難点である。
- ステンレス:保湿性が高く湿気を逃さないのにサビや傷に強い。また、手入れが簡単なのもメリットである。デメリットは、色を選べないし塗装もできないので無機質になり、保温性も低い点だ。
- 木材:湿気や水分に強いヒノキやクリなどが使用されている。木のぬくもりを感じることができて、保温性も高い。また、香りが良いのでリラックス効果も期待できる。ただし、あくまでも木材なので、こまめに手入れしなければカビが生えて不衛生になる恐れがある。
- 樹脂:システムバスで最も使用されている。保湿性が高いのに乾きやすいメリットがある。乾きやすければカビも生えにくいので手入れも簡単である。
浴槽に使われる素材
浴槽には、和式と洋式の二種類がある。和式は深めで、浴槽に座れば肩までつかるようになっている。
洋式は、浅くて長さがあるので寝転がる感じで入浴する。
和洋ともに使われている素材にも特長があるのでここで解説する。
- FRP:繊維強化プラスチックの略で、ガラス繊維で強化したポリエステル樹脂だ。近年の浴槽に最も使用されている素材で、なめらかで肌触りがよいことが特長だ。
- ホーロー:金属板の表面にガラス質の釉薬を焼き付けている。耐久性・保温性に優れているが、非常に重いので床の補強が必要だ。
- ステンレス:錆びない金属で傷にも強い。見た目が冷たく感じるのが難点だ。
- 人工大理石:アクリルやポリエステルを特殊加工して大理石に見えるように作られている。耐久性が高いうえに表面がなめらかで、肌触りもよく清掃しやすいのが特長だ。
- 木:ヒノキ風呂が有名だが、肌触りがよく保温性に優れている。独特の芳香も素晴らしいので人気が高い。天然素材の良さをキープする細かな手入れが必要だ。
扉の種類
浴室の扉にも種類がある。リフォームする際に注意しなければいけないポイントだ。扉の開閉によって出入りしにくくなるなど弊害があればリフォームの意味も薄れる。代表的な3つの扉を説明するので扉選びの参考にしてほしい。
- 開き戸:一般的なドアのように押したり引いたりして開閉するタイプだ。押す開き戸は、よほど浴室が広い場合を除いて、ヒートショックなどで倒れた場合などに開かなくなるのでお勧めできない。引くタイプは、脱衣所に水滴が落ちるので、清掃が面倒で、脱衣所の床が痛みやすい。
- 引き戸:扉を横にスライドさせて開閉するタイプ。2枚扉にするか戸袋をつける必要があるので、開口部のスペースを確保しなければならない。手狭な脱衣所には向いていない。
- 扉の中央が折れるタイプで、押すか引くかして開閉する。コンパクトな開閉スペースなのでマンションの浴室に最も多く採用されている。
システムバス化リフォームのメリットと価格相場
マンションの浴室リフォームの大半がシステムバスを導入している。ここでは、システムバスにリフォームするメリットやデメリットと参考価格を説明して、システムバス化が進む理由を検証したい。
FRP製浴槽のシステムバス
FRP製浴槽は、軽量で耐久性や防水性が高いのが特長だ。マンションの上層階でも導入しやすいし比較的に安価である。
サビや腐敗にも強く、汚れや傷などの補修が小規模で済むので、メンテナンスのコストやランニングコストが抑えられる。
加工がしやすいので豊富なラインナップも魅力がある。
強いてデメリットを挙げるなら、明るい色の場合は汚れが目立ちやすい点と普及率が高いので高級感や優越感が得難い点だ。
価格相場は79~133万円である
人工大理石製浴槽のシステムバスにする
人工大理石は、質感が大理石のようで光沢があってなめらかだ。カラーが豊富で配合する素材によって性能に差がでる。高価ではないが、高級感があるのでコストパフォーマンスが高い。
傷がつきやすいことが難点だが、補修が可能である。また、塩化メチレン含む洗剤は使用できないので注意が必要だ。燃えると一酸化炭素が発生するということも頭に入れておくほうが良い。
価格相場は69万~251万円である。
鋳物ホーロー製浴槽のシステムバスにする
鍋やキッチン容器などにも利用されるホーローは、耐久性があり光沢や輝きが長続きする特性がある。
手入れも簡単で、ガラス質の特性である滑らかさを気に入る人も多い。
しかし、価格が高めなうえ、重量があるので、設置には土台の補強が必要だ。ガラス質は堅牢だが、数十年単位の経年劣化が始まると問題が起きやすい。
価格相場は111万~146万円である。
ヒノキ製浴槽のシステムバスにする
天然素材の良さを存分に活かしたシステムバスがヒノキ風呂だ。その芳香は温泉にいるような贅沢な時間を演出する。
保温性に優れ、木の温もりと肌触りの良さが特長である。
近年では、防カビ対策などあらかじめ加工しているヒノキ風呂が多いので、掃除などの手間も軽減されている。
しかし、価格が高く、高い施工技術が必要なので、取り扱っているメーカーも少ないのが弱点だ。また、乾燥させる必要があるので換気には注意が必要だ。
価格相場は235万~266万円である。
浴室リフォームを部分的にする場合の相場
住み慣れたマンションの在来浴室のリフォームであっても、全てがシステムバス化する必要はない。
用途や予算に応じてリフォームすることも可能である。ここでは、リフォームの方法と概算の費用などを解説する。もちろん、リフェーム費用は、ケースバイケースなのでここで示した金額で収まらない場合もあるので予めご了承いただきたい。
天井のリフォーム
天井のみのリフォームならフィルムか樹脂パネルに張り替えるだけで済む場合が多い。工期は1~2日で十分である。費用はフィルムなら3万5000~6万円程度、樹脂パネルなら4~7万円程度である。
壁のみの場合
壁のリフォームは、使用する素材によって違いがでる。張り替える方法と塗装する方法、タイルを貼り張り替える方法がある。
いずれも工期は1~2日程度だ。
費用は、フィルムだと8~20万円、樹脂パネルなら10~30万程度である。壁を塗装する場合は、10~20万円で、タイルを張り替えるなら10~15万円程度が相場である。
床をリフォーム
床のリフォームは、シートや樹脂パネルに張り替える方法とタイルを貼り替える方法がある。工期は1~2日程度で、シートなら4~14万円、樹脂パネルなら5~15万円程度である。タイルの張り替えの場合は、6~10万円が相場だ。
天井・壁・床すべてをリフォームする
浴室の内装をリフォームする場合は、天井・壁・床をセットでリフォームするほうが断然お勧めできる。
理由は、デザインを統一できることと水漏れへの耐久性の向上だ。個別にリフォームしているとどうしても統一感を失いやすい。また、接地面の強度が違うので水漏れへの耐久性に違いが出てくる。
例えば今回は、壁を樹脂パネルにしたとして床はタイルのままとする。壁と床では防水性に違うし、接地面の素材が違うので接着剤やパテなどが剥がれやすい状態になる。
また、まとめてリフォームしたほうが、出張費や材料費などが抑えられるので無駄な費用を支払わなくて済む場合が多い。
統一感があって好みのデザインを採用した浴室なら入浴時間もリラックスできるものになるだろう。
風呂のダメージをリペアで直す
浴室のリフォームは工期や費用が想像以上にかかる場合がある。少しのダメージなら放置しておいても問題ないと考える人もいるかも知れないが、それは大きな間違いである。
浴室は家の中で一番湿度が高くなる場所である。シャンプーやリンスなどはカビの栄養源でもある。
浴室のダメージを放置しておくとかえって膨大な費用のリフォームが必要になる場合もあるので、リペア業者に依頼して修復できるものは直しておいたほうが賢明である。
ここでは、リペアで直せる浴室のダメージと工期・概算費用を解説するのでリフォームを考える前や、ダメージを発見した際の参考にしてほしい。
カビ
カビの除去は、市販のカビ取りで十分なものもあれば、業者に依頼しなければならない酷いものもある。
カビの根が生えてしまえば、何度も除去してもすぐに生えてくるので厄介だがリペア業者に依頼すれば解決できる。半日程度の時間でリペアできるのでその日に浴室を使うことも可能だ。
水漏れ
水漏れは、蛇口や排水管のパッキンの劣化や壁のひび割れなどが原因で起こる。マンションの上階に住んでいて一番恐ろしい浴室トラブルである。
DIYで補修して直らなかった場合、下階や隣に大きな迷惑がかかるのでリペア業者に依頼することが賢明だ。
パッキンの交換なら、1~2時間程度で済む。ひび割れの場合で、コーキング補修なら2~3時間程度、壁下地にまでダメージがある場合は1~3日程度の期間が必要だ。
タイルのひび割れ
タイルにひびが入る原因は、衝撃や振動、経年劣化などさまざまだ。しかし、肝心なのは放置せず早く直すことである。
ひび割れたタイルを放置していると隙間から水が入る。水は、下地を傷めるしカビの原因にもなる。浴室に大きなダメージを与えないためにも早めにリペア業者に依頼することを強くお勧めする。
タイルのひび割れのリペア作業にはコーキングのみで済む場合と下地の交換まで行わなければならない場合がある。
コーキングのみなら2~3時間程度だが、下地まで手をかける場合は2~3日必要である。
変色
浴室の壁が変色する原因は、カビや汚れの色素が化学反応によって変色する場合と洗剤やカビ取り剤が化学反応する場合が大半である。
リペア作業としては、専門の薬剤で色を抜く作業である。この作業なら1~2時間程度でリペアできる。
もう一つは壁・床・天井などのパネル交換である。これは、リペアではなくリフォームの域になるのでこの記事の「4:浴室リフォームを部分的にする場合の相場」まを参考にしてほしい。
リペアの価格相場
上記のリペア作業の概算費用を解説する。
- カビのクリーニング:1万5000~3万円
- 水漏れ・パッキン交換及びコーキング:1万5000円~
- 水漏れ・壁下地までリペア:3~10万
- タイルのひび割れ・コーキング:1万5000円~
- タイルのひび割れ・下地からリペア:3~10万円
概算費用は、あくまでも目安なので、ケースによっては金額が高くなる場合もあることをご了承願いたい。
正しいリペア業者の選び方
浴室の補修をしてくれるリペア業者はたくさんある。しかし、どのリペア業者が信頼できて、適正に修理してくれるのかはわからない場合が多い。特に、初めて依頼する人は不安があるだろう。
リペア業者を選ぶ基準を解説する。
- 適正価格である
- 見積もりの内訳を説明してくれる
- 浴室のリペア経験が豊富である
- 適正な提案がある
- 必要ないリフォームを勧めてこない
このような基準を元にインターネットで探せば自宅に近い優良なリペア業者を見つけ出すことは容易である。
また、インターネットで一括見積を取ることも可能なので、利用してみるのも良いだろう。
長持ちさせる風呂のメンテナンス方法
浴室を長持ちさせるには、普段のメンテナンスが肝要である。カビを生やさないことや強力な洗剤やカビ取り剤を使わないことが浴室にダメージを与えないことにつながる。
換気を心がけることや残り湯がある場合は必ず蓋をするなど湿気をためない工夫も重要だ。
浴室掃除のポイント
- お風呂を使ったあとは、冷水シャワーで室温を下げる。
- 換気扇を回して湿気を放出する
- 乾いた布で湿気を拭き取る
- お湯を抜いたあとすぐに掃除すれば洗剤は基本的に不要
- 重曹やクエン酸など人にも浴室にも害の少ないものを利用する
これらは浴室に湿気をためない工夫と洗剤を使わない浴室掃除のポイントである。
カビの落とし方と予防
通常のカビは、カビ取り剤で落ちるが頑固なまでのカビには、キッチンパーパーをあてた上からカビ取り剤を吹き付け10分~30分放置する。
その後、シャワーで流せばカビは落ちる。しかし、この方法で落ちなければ業者に依頼するしか方法はない。
繰り返しになるが、浴室に湿気をためないことがカビの予防につながる。薬剤など利用すれば変色の原因にもなりうるので、面倒がらずに湿気を退治してほしい。
尚、カビ被害が深刻な場合には、空間全体や下地、時には構造部にまでカビ菌が飛散している可能性があり、徹底的なカビ除去と防止が必要となる。
下記【カビラボ】では人体・建材にも安全な方法で完璧な除去と防止を行ってくれる。
住宅損傷の問題がカビにある場合、カビ除去専門業者への相談もご検討いただきたい。【カビラボ】https://kabilabo.com/
浴槽の汚れ落としのコツ
浴槽の汚れ落としには残り湯と重曹を使う方法がお勧めだ。
- 残り湯に重曹を1カップ入れて混ぜる
- その残り湯の中に洗面器やイスなどを入れて蓋をして一晩放置する
- 翌日、排水してスポンジで軽くこすり、シャワーで流せばほとんどの汚れは落ちてピカピカになっている
浴室用の洗剤を使うことも便利で綺麗になるのでお勧めしないわけでもないが、重曹やクエン酸なら飲料や食品にも使われている。
もちろん、食品用の重曹やクエン酸だが、基本的に同じ成分なので健康被害がない洗浄剤だ。なので、浴室掃除にお勧めできるわけである。
火災保険を使った浴室リフォームの事例
マンションで水漏れ事故が起こった場合、火災保険が適用されるケースがある。火災保険には、給排水事故などによる水漏れが補償の対象になっている場合も多い。知らない人は自分のマンションの火災保険を確認することをお勧めする。
札幌市の事例では、浴槽にひびが入り下の階に漏水した。
住民に過失が無かったので、写真や見積もり・申請書類を業者が手配し2週間後に保険金がおりて在来浴室がユニットバスに生まれ変わった。
もちろん、下の階の住民の損害も補償された。
ここで重要なのは、火災保険の申請等に精通している業者かどうかである。火災保険を理解していない業者ならスムーズに浴室が生まれ変わることはないかもしれない。
もし、浴室でトラブルが起こった場合、業者選びの段階で火災保険に精通しているかどうか確認することも重要な要素だと認識していただきたい。