住まいは築年数と共に少しずつ劣化していくものだ。一戸建てはもちろん、マンションも室内の補修は自分自身で行わなければならない。そんな「補修」に関して、多くの人を悩ませるのは浴室タイルのひび割れである。
浴室の壁はタイルの素材を使っている住まいが多い。タイルは陶磁器でできているため、防水性が非常に高いのだが、どうしても「ひび割れ」が起きてしまう。タイルが割れしてしまうと、せっかくの防水性も低くなり、さらに割れている部分に水が溜まってしまい、そこからカビなどが発生するリスクもある。
ただ、浴室タイルのひびの補修には費用がかかるので、「何とか自分で修理できないかな・・・」と思っている人も多いはずだ。この記事を見ているあなたも、そのうちの1人ではないだろうか?
そこで今回は、浴室タイルのひび割れや剥がれ、タイル目地の正しい補修方法を紹介しようと思う。
ここでの注意点は、現状のタイルの状態を確認して原因を突き止め、適切な方法で補修することだ。これを守らずに補修すると、見た目が変になったり、補修しきれていなかったりするので注意が必要である。ぜひ最後まで読んでいただき、浴室を昔の状態に戻して欲しい。
タイルがひび割れてしまう原因
浴室のタイルがひび割れてしまう原因は主に経年劣化によるものだ。その他に挙げられる原因としては、物がぶつかった時の衝撃や壁、床の歪みが生じてタイルがひび割れてしまうケースである。
又、タイル自体の経年劣化というよりもタイル目地の劣化により水が侵入してひび割れてしまうことも考えられる。タイルの目地の耐用年数は10~15年と言われており、定期的にメンテナンスが必要だ。
ここまで挙げた原因を考慮すると、どうしても年数が経てばタイルのひび割れは起きてしまう。そこで大切なのは、タイルのひび割れを確認したら適切な補修、若しくは修繕を行うことだ。もし、浴室のタイルがひび割れた状態のまま放置してしまうと家に様々な被害を与える可能性がある。
では、浴室タイルのひび割れを放置してしまうとどんな被害があるか次に紹介する。
劣化した浴室タイルを放置した時の被害とは
タイルが使用されている浴室のことを在来式と呼ばれ、数は少なくなったが現在でも採用している家もある。しかし、在来式の浴室はヒートショック現象を引き起こす原因とされており、高齢化が進む中で現在ではシステムバス(ユニットバス)を採用するのが一般的になっている。
在来式の浴室は、タイルのひび割れやタイル目地の劣化などが起きるので定期的なメンテナンスが必要になる。浴室は水を使用する場所のため、タイルのひび割れやタイル目地が劣化しているとそこから水が侵入し、タイル内部にある構造体(柱や土台等)に水が滲みこんでしまう。
水が浸入している状態を放置してしまえば、いずれ構造体(柱や土台等)が腐ってしまい家に多大な被害を起こす可能性がある。また、木部に水が滲みこむことでシロアリが発生し、家の柱や土台、木部が食べられてしまう危険もある。
家の構造体が腐食してしまうことやシロアリの被害にあうと浴室のタイル補修だけでは収まらず、家全体を修繕しなければいけない事態になる可能性もあるのだ。そのため、浴室タイルのひび割れやタイル目地の劣化を発見した場合は、早急に対処した方がいいだろう。
タイルの損傷を確認する方法
まずは、浴室タイルの損傷状態をチェックしよう。タイルのひびをチェックするポイントは5つある。
1.細かい亀裂もチェックすること
2.光を照らしながらチェックすること
3.接続部分を注視すること
4.タイル表面を軽く叩く
5.タイル目地が欠けていないか
この5つのポイントさえ押さえれば、タイルの損傷状態は簡単にチェックできる。
1つ目のポイントである、細かい亀裂のチェックは、タイルは意外と細いひびが入るので要注意だ。良く目を凝らしてチェックしないと見落としてしまうほど細いひびの場合がある。しかし、そのひびを放っておくと、いずれ大きなひびになる可能性もある。
2つ目のポイントは浴室内を少し暗くして、ペンライトや懐中電灯で照らしながらチェックしてみよう。明るい状態だと意外と見えない箇所もあるので、光を当てることでひびを発見できることもある。
3つ目のポイントは天井や床面などの接続部分を注視することも重要だ。もちろん、接続部分以外も良くチェックすべきだが、接続部分は特にひびが入りやすい部分だからである。
4つ目のポイントはタイル表面を叩くことで、壁からタイルが浮いているかチェックできる。タイルが浮いていると叩いた時に鈍い音がする。タイルの浮きがあると剥がれやすくなり、補修でタイルを剥がす時に浮いているタイルも一緒に剥がれてしまう可能性があるので注意して確認してもらいたい。
5つ目のポイントは、タイル目地の劣化状態だ。浴室の壁や床はタイルだけではない。タイルを貼り合わせる時に一緒に施工する目地も重要な箇所だ。タイル目地が欠けていたりすると、そこから水が浸入するので損傷を確認したら補修した方がいい。
この5つのポイントを押さえてチェックし、補修する箇所にはテープを貼るなど目印をつけておこう。
補修方法を定める為の確認事項
浴室タイルの損傷をチェックしたら、その次は損傷状態の規模をチェックすることだ。なぜ、「規模」をチェックするかというと、損傷の規模によって補修方法が異なるからである。この作業は、補修する際にどのような道具を使い、どのような方法で補修するかに関わってくる重要な部分になる。
タイルのひびの規模については、大きく分けて「割れているだけ」の状態と、「タイルの一部が破損している」状態の2つに分かれる。1つずつタイルが割れている部分をチェックして、この2つのどちらの状態かを確認しておこう。
テープを貼るときに、テープの貼り方を変える(クロスさせるとか)など、後から分かるようにしておくと良い。補修方法を先に言ってしまうと、割れているだけの場合はコーキング剤を埋め込み、破損している場合はタイルを接着するという方法だ。
タイルのDIY補修方法
ここでは、浴室タイルの補修方法についてご紹介していく。浴室タイルがひび割れていたり、タイル目地が劣化していたりすると水が侵入してきて柱や土台等の構造体が腐食してしまうのを上記でお伝えした。もし、浴室タイルが劣化し補修しなければいけない場合は、今回の補修方法を参考にしていただけたらと思う。
浴室タイルのひび割れを補修する方法
では、浴室タイルが「割れているだけ」のときの補修方法からだ。浴室タイルが割れているだけの場合には、バス用のコーキング剤を使って補修する方法がベストだ。
タイルのひび割れを補修する手順は下記になる。
1.目印を付けた部分の周辺をていねいに拭く
2.マスキングテープ(コーキング剤に同封)で割れている部分の周りのタイルを養生する
3.コーキング剤をチューブから出してヘラ(コーキング剤同封)に付ける
4.ひびの奥側から埋め込むように塗る
5.隙間なく埋めたらテープをはがす
浴室タイルのひび割れに使うバス用コーキング剤は、ホームセンターやネット通販で購入ができて、価格が大体1,000円以内で手に入る。
タイルのひび割れ補修を行う時に注意していただきたいのが、浴室に湿気がないことが重要だ。湿気ある状態だとコーキング剤が乾燥しにくいので、きちんと割れている部分にコーキング剤が埋まらない可能性があるからだ。そのため、浴室はきちんと乾燥した状態で補修作業を行うことが大切である。
また、コーキング剤を埋め込むときには、ていねいに行うことも重要である。マスキングテープからはみ出してしまうと、タイルの表面にコーキング剤が付いてしまうこともあるので注意しよう。もし心配であれば、マスキングテープを貼る範囲を広くして、コーキング剤が表面に広がらないようにしよう。
仮に、コーキング剤が広がってしまったらすぐに拭き取り、それでも落ちない場合は紙やすりなどで少しずつ削ると良い。
破損した浴室タイルを貼り直す補修方法
続いてタイル自体が破損している時の補修方法だ。このときは、破損したタイルが手元にある前提の補修方法になる。補修方法を簡単に説明すると、タイルが剥がれた壁部分に接着剤を塗り、そこにタイルを貼り直すという方法だ。もちろん、接着剤はバス用の特殊な物である。
では、補修の手順を下記でお伝えする。
1.目印を付けた部分の周辺をていねいに拭く
2.接着面のゴミやさびなどはブラシなどでていねいに落とす
3.接着面に棒状に太く塗る
4.壁面に貼り付けたら、接着テープで固定して24時間ほど放置する
バス用の接着剤の価格は、数百円から1,000円以内で購入できる。
破損したタイルを貼り直す補修について注意するところは、接着面を良く掃除してから貼り付けることだ。接着面に細かいゴミなどがあると、接着力が弱く持続しない可能性がある。また、コーキング剤と同じく、湿気がない室内で行わないと、上手く接着しない場合がある。
さらに、使用する接着剤ごとで多少異なるが、接着して放置するときの室温は23℃ほどが適温である。その状態を保つために、冷暖房を工夫するなどが必要だ。仮に冷暖房が付いていない室内であればそこまで気にすることはないが、接着時間を数時間ほど長めに取った方が良いだろう。
浴室タイルの貼り替え補修方法
タイルの貼り替えを行うときは、まず貼り替えるタイルの目地を取り除く必要がある。タイル目地を取り除くには、ドライバーや割り箸等を使用して目地を削っていく。タイルの貼り替えを行う時に注意していただきたいのが、貼り替えるタイルの枚数は少ない範囲で留めておくということだ。
なぜ少ない方がいいかというと、タイルを剥がす時の衝撃で周辺のタイルが浮いてしまい被害が広がってしまう可能性があるからだ。そのため、タイルを貼り替える場合は、すでに浮いていて剥がれやすい状態であることが望ましい。タイルが浮いているか確認する時は、既存のタイルを軽く叩くことで確認ができる。タイルが浮いていると叩いたときに鈍い音が鳴る。
もし、何枚もタイルの貼り替えが必要な場合は、被害が大きくならないように専門業者に依頼することをおすすめする。では、タイルの貼り替えの手順について下記で紹介する。
1.貼り替えるタイルの目地を削る
※ドライバー等で軽く叩きながら削る。ただし、あまり強い衝撃を与えてしまうと周辺のタイルが浮いてしまうので気をつけること。
2.目地が取り除けたら貼り替えるタイルを割りながら剥がす
※タイル表面にドライバー等で叩きながら割る。ここでも周辺のタイルに影響が出ないように慎重に行うこと。
3.タイルと目地が剥がれたら新しいタイルの裏側に専用の接着剤を塗る
4.新しいタイルを貼る
5.貼り替えたタイル周辺にマスキングテープを貼る
6.タイル目地をヘラで充填する
7.目地の表面が乾いてきたら、水に濡れたスポンジで余分な目地材を拭き取っていく
8.マスキングテープを剥がし、水で濡らし固く絞った布で全体を拭き取る
浴室タイルを貼り替える時に必要な費用は、貼り替えるタイルの枚数やサイズによって違う。一般的な100角のタイルが約400円/枚、接着剤が約400円、タイル目地材が約400円となり、浴室タイルの貼り替え補修にかかる費用はおよそ1000~1500円程で済むだろう。
浴室タイルの貼り替え補修にかかる日数は、枚数が少なければ1日もかからない作業だ。ただし、前述したとおりあまりにタイルの貼り替える量が多い場合は、専門業者に依頼することをおすすめする。
タイル目地のひび割れ補修方法
タイル目地の補修は、タイルを貼り替える必要がないので補修手順も少ない。タイル目地は浴室の環境や年数にもよるが、カビの発生や目地が削れて水が侵入しやすくなる状態になる。そのためタイル目地の劣化が確認できたら補修をするといいだろう。
ただし、目地を取り除くときはその振動でタイルが浮いてしまう可能性があるので注意して行うことが大切だ。では、タイル目地の補修手順について下記でご紹介する。
1.既存のタイル目地を削る
※前述したようにドライバーや割り箸等で削り取る。この時、周辺に過度な衝撃を与えないこと。
2.補修するタイル周辺にマスキングテープを貼る
3.タイル目地をヘラで充填する
4.目地の表面が乾いてきたら、水に濡れたスポンジで余分な目地材を拭き取っていく
5.マスキングテープを剥がし、水で濡らし固く絞った布で全体を拭き取る
タイル目地補修にかかる費用は、タイル目地材の材料費400円程で済むだろう。補修にかかる日数も1日とかからないので手軽に行える補修だ。しかし、補修する時の衝撃が正常なタイルに伝わって浮いてしまうなどの影響がでる可能性があるので、補修する箇所が多い場合やDIYで行う自信がないという方は、専門業者に依頼することをおすすめする。
タイルのひび割れに使う補修材と道具
ここでは、タイル補修に使う材料や道具についてご紹介する。ここでご紹介するものはホームセンターやネット通販で購入することができる。
1.タイル目地材
耐水性がありタイルや石、レンガなどの目地にも使える目地材だ。水を加えて混ぜる必要があるので製品の使用方法をよく確認して使用していただきたい。タイル目地材の価格は500gで400円程だ。目地材の内容量によって金額は違うので、必要な分の量の目地材を購入するといいだろう。
2.タイル接着剤
タイルの貼り替えに使用する耐水性のある専用の接着剤だ。タイルの貼り替えに用いる接着剤は専用の物を使うことが大切だ。浴室は水を使うので耐水性のない接着剤を使用してしまうとタイルが剥がれてしまう可能性があるので注意していただきたい。タイル接着剤は500gで400円程だ。
3.浴室タイル防水シール
水回り用のシーリング材でタイルの目地補修やタイルのひび割れ補修にも使える。浴室の壁と浴槽が突き付けてある箇所にはシーリングが打たれているが、この箇所にこのシーリングを使うことができる。また、浴室に限らずキッチンや洗面所にも使用可能だ。こちらの製品はマスキングテープとヘラがセットになっていて700円程で購入することができる。
4.陶器質100角タイル
在来式の浴室で使われているタイルは、家によって材種やサイズが異なる。タイルの貼り替えを行う場合は既存のタイルの種類とサイズを確認することが大切だ。一般的に使用されるタイルは陶器質のタイルでサイズは100角だ。
タイルのサイズは
・100角
・150角
・200角
・300角
があり、中には300mm×600mm等の変則的なサイズもある。
タイルの材質は一般的に磁気質の物が多いが、現在ではタイルが冷たくなりにくい特殊な加工を施した機能性のあるタイルもある。
DIYでタイルを補修するメリット
ここまで浴室タイルの補修方法と補修道具についてご紹介してきた。浴室タイルの補修はDIYで行うことは可能だ。DIYでタイル補修を行う最大のメリットは費用の安さだ。しかし、浴室のような水回りの補修はよく注意して行ってもらいたい。なぜなら、水が柱や土台等の構造体に浸み込んでしまうと木部の腐食やシロアリ被害が起きる可能性があるからだ。
補修が簡単にできるからといって適切にされていないと、被害がでてしまい返って修繕の規模が大きくなる。また、タイルや目地を剥がす時に起こる振動で正常なタイルまで浮いてしまう可能性もある。
もし、補修する箇所が多かったり、DIYで行う自信がない場合は専門業者に依頼して補修をしてもらうことをおすすめする。補修した後の安心感は、やはり専門業者に行ってもらう方が大きくDIYでは得られない違いだ。
タイルの損傷状態によっては補修業者に依頼する
ここまで、浴室タイルの損傷の確認方法や具体的な補修方法を解説してきた。ただし、タイルの損傷範囲が大規模であれば、業者に補修を依頼した方が良い場合がある。業者に依頼した方が良い規模は人によるが、3~4箇所を超えて損傷があるのなら業者に任せた方が良いかもしれない。
また、剥がれたタイル自体を紛失している場合も、業者に相談すると良いだろう。そんなときには、まず業者に見積もりを依頼しよう。見積もり依頼はネットで簡単にでき、タイルの損傷箇所の画像を送ることで、精度の高い見積もりをもらえる。
タイルの補修費用は補修規模などによるので一概には言えないが、市販のモノを利用してDIYで補修するよりは高くなる。ただし、補修の精度が非常に高いので、たとえばコーキングがひびの部分からはみ出たり、タイルの接着がずれたりするようなことはない。
また、補修した後にタイルがすぐに剥がれてしまうようなリスクも軽減する。いずれにしろ、DIYで補修するかどうかは、見積もりを見てから決めた方が良いだろう。安すぎる補修業者の場合は質が悪い補修になるので要注意だ。きちんと実績があり、補修する人も建築業界のプロに任せるのが無難な選択と言えるだろう。
タイルの損傷状態では全面リフォームも検討
浴室タイルの損傷状態によっては、浴室全面リフォームを検討した方がいい。無理して補修を最小限で抑えようとすると、後々補修が必要になってしまったり、補修範囲が広がってしまったりする可能性がある。
耐用年数や費用を考慮すると全面リフォームをした方が費用対効果はいいはずだ。全面リフォームを行う場合は、既存と同じ在来式にするかシステムバス(ユニットバス)にするか好みで選んでもいいが、ヒートショック現象を考慮すると断熱性が高いシステムバス(ユニットバス)を選ぶ方がいいだろう。
かかってくる費用は浴室のグレードによって違うが、平均的な価格で見るとほぼ同じ費用相場で100万円程だろう。在来式とシステムバス(ユニットバス)の大きな違いは施工日数だ。システムバスは約3~6日で完成する。(洗面所の内装工事や木部補修による大工工事を含めると4~6日)
在来式は施工手間が多く日数がかかる。既存の浴室の状態にもよるが、約6~10日はかかる。また、浴室の全面リフォームをする時は、完成まで入浴ができなくなる。そのため、入浴する時は銭湯等を利用する必要があることに注意していただきたい。
まとめ
既存のタイルが小さな規模の損傷であれば、市販のモノを利用してDIYで補修しても良いだろう。ただし、浴室はどうしても湿気が溜まりやすい場所であるということは忘れてはいけない。湿気が溜まりやすい場所ということは、補修したタイルが剥がれたり、再度ひび割れしたりしてしまうリスクが高いということだ。
また、コーキング剤などの補修は、多少の技術が必要なのも事実だ。器用な人はサラッとやってしまうかもしれないが、このような補修作業になれていない人は、残念ながら失敗してしまうこともある。その点も加味して、自分でDIYするか、業者に依頼するかを判断するのも良いだろう。いずれにしろ、見積もりは無料なので、一度見積もりすることをおすすめする。