昨今の住宅では、珪藻土などの塗り壁やコンクリート打ちっぱなしなど、部屋の壁の内装もさまざまであるが、一般的には安価で張替えも可能なクロスを貼ってある壁が多いだろう。
しかし、クロスはデリケートで汚れが落ちにくいというデメリットもあり、どうすればいいか悩んでいる人も多いのではないだろうか。
材質や汚れごとに掃除方法や注意点が異なるので、ご家庭のクロスを傷めないように適切な対処方法を知ることから始めてみてほしい。
クロスの材質ごとの汚れの落とし方
クロスはいわゆる「壁紙」であるが、その材質は単純に紙でできているものばかりではない。
クロスの材質によって、汚れの落とし方も変わってくるので、まずは汚れを落としたいクロスの材質がどういったものか確認してみよう。
ビニールクロス
クロスの表面が、塩化ビニールなどを原料としたビニールシートで覆われているものをビニールクロスと呼び、賃貸物件などの多くの部屋で用いられている。
耐久性があり施工が簡単で、費用が安く扱いやすいことから、日本の住宅で広く普及しているクロスだ。
デザイン性も豊富でさまざまなプリントのものがあるほか、表面に立体的な加工が施されているものなどもあり、比較的お手入れがしやすく汚れも落ちやすい素材だが、凸凹の間に汚れが入り込んできれいに落とすのが難しい場合もある。また、濡れ雑巾などで大雑把に拭くと、ホコリなどを含んだ汚れがクロス全体に広がって、余計に汚れて見えることにもなりかねないので注意が必要である。
汚れの種類にもよるが、最初にホコリを払い落とすか掃除機などで吸い込んでから、洗剤を薄めた水を含ませたスポンジで、少しずつ汚れを落としていくといいだろう。
頑固な汚れにはメラミンスポンジなどでこするのが効果的で、表面の凸凹の間の汚れは洗剤をつけた使いふるしの歯ブラシやタワシなどで汚れを落とし、水拭きをして洗剤を拭き取って最後にから拭きで仕上げる。
織物クロス
合成繊維や綿、麻、レーヨンなどの素材を織り込んでできているクロスである。
厚みや重厚感、高級感があるが、汚れを落とすのは難しい材質だ。
表面的な汚れや鉛筆などによる落書き程度なら、消しゴムでこすれば落とすことは可能である。
しかし、クロス全体が布でできていて水分が染み込みやすいので、洗剤を使用したり水拭きするのは厳禁である。
織物クロスを拭くのなら、から拭きか、硬く絞った雑巾で行うようにする。
紙クロス
素材はさまざまであるが、和紙や洋紙でできている紙のクロスもある。
ヨーロッパなどでは主流であり、デザイン性の高いものがよく輸入されて用いられている。
撥水加工がされているものもあるが、紙でできているため水分に弱く、水分が染みこむとシミになることもあるので、極力水拭きするのは避けたほうがいいだろう。
ちょっとした汚れなら消しゴムが効果的であるが、ふだんから汚れないように気を使い、液体をこぼしてしまったらすぐに乾いた布で拭き取るようにしよう。
汚れごとの対処方法
クロスの汚れを効果的に落とすには、その汚れの原因を見極めて、汚れごとに合った洗剤や道具などを使うことが必要である。
汚れごとの対処方法についてご紹介しよう。
電気スイッチ周りのクロスは、手で触れることが多いので汚れがちである。
また、部屋でタバコを吸うと、その煙によって部屋全体のクロスがヤニで汚れてしまい、茶色っぽくくすんでしまう。
手垢やヤニによる汚れを落とすには、家庭用のアルカリ性洗剤や重曹、セスキ炭酸ソーダなどが効果的である。洗剤を水で薄めたものをスポンジに含ませてやさしくなじませていくだけで、ヤニによる汚れが落ちていくのがわかるだろう。
特に煙が立ち上って汚れがひどくなる天井付近には、薄めた洗剤液をスプレーしておくと落ちやすくなる。
ただし、クロスが水に強い材質かどうかあらかじめ確認しておく必要がある。
また、部屋全体のクロスを掃除する場合には、クロスのつなぎ目に水分が入らないように注意しよう。
最後に、洗剤の成分がクロスに残らないように水拭きとから拭きも忘れずにして頂きたい。
ボールペンやクレヨンなどによる汚れ
小さいお子さんがいるご家庭では、クロスに落書きされてしまうのも悩みの種である。
まずは、消しゴムで落ちるかどうか試してみて、それでも落ちないようならメラミンスポンジがおすすめである。
少しだけ水を含ませてこするだけなので、洗剤を必要とせず、いろいろな材質のクロスにも使えるので安心だ。
頑固な汚れには、漂白剤やクレンザーなどを綿棒の先につけてこすってみるといいだろう。
また、歯ブラシに歯磨き粉をつけてこするのも効果的である。
ただし、これらの洗浄力の強い薬剤はクロスを傷める危険性があるので慎重に行わないといけない。
洗剤や薬剤を使用したら、必ずきれいに拭き取って、から拭きをするのをお忘れなく。
カビによる汚れ
湿気の多い部屋や結露がひどいと壁の下部にカビが発生することがある。
水拭きの掃除では落ちないので、水で濡らしたブラシやタワシなどで軽くこすってみて、落ちないようならカビ取り剤や重曹、お酢などを使用して拭き取ってみる。
ここでもメラミンスポンジでこすると汚れが落ちやすくなる。
また、汚れを落とした後には、再度カビが発生しないように除湿をしたり、定期的に掃除をするようなケアも有効である。
クロスの汚れを落とす時の注意点
クロスはデリケートなものであるので、洗剤によってはクロスを傷めてしまう危険性もあるし、水分そのものを嫌う材質もある。
また、タワシでこすってクロスを破ってしまっては元も子もない。
クロスの汚れを落とす前に、目立たない部分で洗剤をつけて異常がないか確認し、なかなか落ちないからと言ってこすりすぎないように注意しよう。
クロスの材質やお手入れ方法に不安がある場合は、業者に相談してアドバイスをもらったり、クリーニングを依頼するといいだろう。
・業者に依頼する場合
クロスの汚れは、市販の洗剤や道具を使用して自分で落とすことも可能であるが、範囲が広くて手が回らない、汚れが頑固でなかなか落ちないという場合には、ハウスクリーニングの業者に依頼してきれいに仕上げてもらうこともできる。
クリーニングをする壁以外は汚さないように養生するので、家具を移動したり片付けたりする必要はあるが、広範囲のクロスを掃除するのは体力的にも技術的にも大変なことなので、専用の洗剤や道具を持つプロの手を借りるのも賢い選択である。料金は1㎡500円くらいからが相場になる。
また、クロスの張替えは1㎡1500円くらいなので、クロスが古くなってきて全体的に汚れているようなら、クリーニングと共に張替えを検討してみるのもいいだろう。
料金も業者によって差があるので、クリーニングの場合と張替えの場合と、それぞれ複数の業者で見積もりを取ってみよう。
クリーニングと張替えの両方を行っている業者もあるし、その後もクロスをきれいに保つために防カビ効果を施してもらったり、お手入れのアドバイスをしてもらうこともできる。
・賃貸物件のクロスの汚れについて
アパートやマンションなどの賃貸物件では、入居者が入れ替わるごとにクロスを張替えることも多い。
そのため、退去する際には特にクロスの汚れを落としたり掃除しない人も多いのではないだろうか。
確かに、部屋全体のクロスの面積は広く、垂直に拭き掃除をすることは大変なので、苦労をしてまできれいにする必要はないかもしれない。
だが、交換の必要がないほどきれいにして退去すれば、その分敷金が返還される可能性もあるし、管理会社や大家の印象も良くなる。賃貸物件の場合、通常の使用の範囲の汚れであるテレビや冷蔵庫などの家電製品による黒ずみや、経年劣化などは入居者の責任は問われない。
しかし、タバコのヤニによる汚れや、水漏れなどを放置して発生したカビ、入居者の過失による汚れには責任が発生する。
入居時と同じくらいまできれいにすることはできないが、退去時にはできるだけ汚れを落とすようにしたほうがいいだろう。
まとめ
一般的に普及しているビニールクロスは、表面が薄いビニールで覆われているので簡単な汚れなら落ちやすいが、タバコのヤニや手垢、油汚れ、カビなどの年月をかけて付着していった汚れはそう簡単には落ちなくなる。
何年もたってからクロスの汚れを落とそうとすると、その分汚れはしつこく堆積していて落ちにくくなる。
ふだんから汚さないような気遣いや、ちょっとした汚れでもすぐにきれいにしたり、定期的に掃除する習慣を持つことで美しいクロスを保持することができるだろう。
また、頑固な汚れを落とそうとして強力な洗剤やタワシを使用して、クロスを傷つけてしまうことのないよう、業者に依頼することも検討してみてはいかがだろうか。