壁紙の補修方法には、傷の種類によって幾つかの方法がある。DIYで修復可能なものもあれば、綺麗な仕上がりにならない場合もある。
賃貸物件であれば、かえって修繕費の請求が心配だ。破損の範囲が広い場合や、満足のいく仕上がりを求めるのであれば、DIYによる自己流ではなく、補修専門の業者に壁紙修復を依頼するのも一つの選択肢である。
補修専門の業者に壁紙修復を依頼する場合、壁紙を切り貼りする方法と、上からコーキング剤を塗り込む方法の2つに大別される。これらについて説明していこう。
壁紙クロスの傷の種類別の修復方法
画鋲の穴はペン型パテのキットやシールでDIY
白い壁紙に開いた画鋲の穴の跡はよく目立つ。DIYで修復する場合は、市販品で画鋲の穴を塞ぐ補修キットが販売されている。
補修キットは先の細いペン型のパテとヘラがキットになっている。ペン型のパテは色違いで揃っており、既存の色に合ったものを画鋲の穴に注入する。補修も手軽で、購入する場合も安価で済むのがメリットだ。
ホワイト・ライトアイボリー・ライトベージュなど、壁紙の色と近いアイテムを選び、フィットする色がなければ、薄い色を先に選び、徐々に濃い色を混ぜて壁紙に近い色を調整することも可能だ。
また、壁紙シールでも対応できる。既存の壁紙にできるだけ近いものを選ぶこと。プレーンな壁紙であれば、それほど違いは目立たないはずだが、できるだけ近いものがやはりいいだろう。
補修したい部分の壁にシールの裏紙がついたまま押し当て、貼り付ける部分をカッターで切る。この時既存の壁紙もいっしょに切ることで、同じ大きさに切ることができる。下地をあまり切らないよう加減は必要なので、注意したい。既存の壁紙部分を剥がし、壁紙シールを貼る。
賃貸物件の場合、壁紙の修繕費負担の内容は管理会社により異なる。
一般的な賃貸物件であれば、日焼けなどによる自然消耗・画鋲やピンの穴・冷蔵庫の後ろの黒ずみ汚れなどはオーナ負担、釘穴・ネジ穴・タバコのヤニによる汚れは入居者負担となるケースが多い。
万一修繕費を請求されるリスクを考えると、画鋲の穴も無かったことにしたいのが心情である。
賃貸物件の場合は、補修キットで穴を埋める方法を選んだ方がリスクは少なくなるだろう。
クレヨンや油性ペンでの落書きの補修
壁紙に落書きされた経験は子供のいる家庭では珍しくないはずだ。クレヨンや油性ペンで落書きされた場合は、かなり焦るのではないだろうか。
クレヨンの落書きは、歯磨き粉を少量馴染ませ、古くなった歯ブラシで優しくこする。クレヨンと歯磨き粉がなじみ、浮き上がってきたら、固く絞った雑巾など布で拭きあげる。
油性ペンの場合、まずはメラミンスポンジを試してみるといいだろう。これもあまり強くこすらないこと。
壁紙は強くこすると傷むので、無理に力を込めないことだ。
どちらも色によって、また、補修するまでに時間が経っている時などは、元どおりに落としきれない場合もある。その際は、無理に落とそうとせず、クロスの部分的な貼替えなどの修復を検討しよう。大きさがそれほど大きくなければ、前述の壁紙シールを使用してもいいだろう。
壁紙のめくれ、部分的な剥がれや破れ
壁紙がめくれる原因のほとんどが湿気によるものだ。浴室や結露のひどい窓付近の壁紙に多い。壁紙は湿気を吸うと一度膨張し、乾燥時に縮む。
これを毎日繰り返すと、壁紙が浮いたりめくれたりする。そのまま放置してしまうと、壁紙そのものが割れてかけ落ちてしまう可能性もある。
めくれに気が付いたら、手早く修復することが一番の対策だ。市販の壁紙用のボンドと壁紙ローラーがあれば、DIYで修復も可能だ。繰り返しめくれると壁紙が傷むので、密着性が高く、湿気に強い質の良いボンドを選ぶことをおすすめする。
また、浴室や窓の結露による湿気は、壁紙だけでなく建物本体にもよろしくないから、その対策も講じるべきだろう。
壁紙の剥がれや破れも、部分的なものはDIYで修復可能だ。
何かをぶつけるなど物理的なことがなくても、壁紙クロスと壁紙クロスの継ぎ目は、経年で浮き上がり、剥がれやすいし、そこから傷みが広がり、破れる場合もある。
DIYで修復する場合は、市販のボンドと壁紙ローラーを使って、圧着させるようにする。
猫の爪とぎ跡などのひっかき傷は補修用のボンドで
飼い猫の爪とぎも壁紙には大敵だ。爪とぎの際、壁紙に爪を立ててひっかき傷ができてしまうからだ。壁紙がひっかかれてめくれ上がっている場合には、壁紙補修用のボンドと固く絞った雑巾、綿棒などで補修ができる。
ひっかかれた部分の壁紙の裏に壁紙補修用のボンドを綿棒などで塗り、壁紙を貼り付ける。固く絞った雑巾で押さえ、はみ出したボンドを拭き取る。壁紙ローラーがあればそれで押さえると綺麗に仕上げることができる。
猫は同じ場所で爪とぎをするので、別の場所にもっと快適な爪とぎ場所を用意する、透明のシートを貼って防ぐなど予防措置を取っておくといいだろう。
築年数の古い賃貸物件は、ひっかき傷がつきやすい厚手のフワフワとした壁紙が使用されているケースが多く、少し家具を擦っただけで傷になることが多い。
壁紙が欠損せずに残って剥がれている場合は、同じように丁寧に壁紙を伸ばし、ボンドとローラーで修復可能なケースもある。もし壁紙が欠損していたら、部分貼替えか、補修用のパテを用いて壁紙の色と模様を再現する。
さらに、柄や色付きの壁紙であれば、アクリル絵の具を使って色調を調整が必要だ。修復箇所が広範囲の場合は、素人の補修は失敗に終わる可能性が高いので、補修専門の業者に見積もり依頼をして、補修を検討した方が無難だ。
また、傷が壁紙下地の石膏ボードにまで達している場合も、業者に依頼したほうがいいだろう。
石膏ボードまで達している穴や角などの凹みの補修
壁紙の下にある石膏ボードは意外に衝撃に弱く、簡単に穴が開いてしまう。他の傷に比べ、少々手間が掛かりるが、穴を塞いでから壁紙を張替えれば修復は可能だ。
アルミ板に接着剤付きのグラスファイバーを合わせた「リペアプレート」で穴をカバーし、上から補修用のパテを塗り段差を整えてから壁紙を貼り直す。
壁の穴が大きい場合は、壁紙1枚貼替える方が仕上がりは良い。
角などの凹みの補修は可能だろうか。
前述の通り、壁紙の下地に使われる石膏ボードは、意外と脆いものだ。特に出っ張った角の部分は簡単な補強材が入っているが、ものを強くぶつけたりすると凹みができてしまう。
凹みは壁紙そのものの傷ではなく、下地そのものが傷ついていることが大部分だろう。下地を補修するにはパテで成形するなど技術が必要な為、補修専門の業者に依頼するべきだ。
無理にDIYで補修すると、仕上がりがうまくいかないだけでなく、すぐに取れてしまうなど不具合も出てくる。
壁紙クロスの修復は貼替えより補修がおすすめ
壁紙の修復:貼替えの費用とメリット・デメリット
壁紙の貼替えをする場合、そのメリットは、仕上がりの美しさだろう。希望があれば、今の壁紙以外に貼替えることで、新しい部屋のような雰囲気になる。また、経年でどうしても色がくすむので、部屋も明るくなる可能性が大きいだろう。
貼替えの際に、部屋の家具を移動したりする準備は必要だが、既存壁紙の剥がし、下地調整を行うので、1〜2日間程度の作業になるはずだ。
壁紙の貼替えの費用相場は、最安で1㎡あたり950円前後、質の良い壁紙であれば1,100円が相場だ。例えば6畳程度の洋風の個室では、4面の壁の面積は約30㎡ほどだから、30,000円前後の費用がかかることになる。
これに、下地処理や廃材の処分費用などが含まれる場合もあるし、追加となる場合もある。
部分補修に比べ、壁の全面が美しい状態に仕上がるが、賃貸物件の場合や傷みが少ないようなら、無駄な出費となってしまう。
壁紙の修復:補修をプロに頼むメリット・デメリット
壁紙クロスの補修は、プロに頼むことができることをご存知だろうか。補修をするプロに頼むことで、その技術と多くの経験とで、かなり美しく修復してもらえるはずだ。DIYで補修する自信がない場合は、プロに頼めば間違いない。
業者によって補修方法は異なるが、壁紙の部分貼り替え、またはパテを固めた後、クロスメイク(染色や模様付け)でどこに穴や傷があるかわからないレベルまで修復が可能だ。
価格は時間単価となるので、事前に傷の箇所や状態を明確に伝えておけば、作業時間が明確になることで、見積もりがより正確になり安心だ。
工事日程もほとんどが1日を超えることはないし、何よりDIYの補修よりも下地の処理など的確に作業が進み、美しく仕上がる。
デメリットは、壁全体の貼替えではないため、既存の壁紙がそのまま残る。既存の壁紙がくすんでいる場合は、そこは変わらないということだろう。
プロの壁紙補修の手順
必要なアイテムと使用する材料
【必要なアイテム】
・ヘラorカット定規・パテ用のヘラ・鉛筆・ローラー・スポンジ・カッター・サンドペーパー
【使用する材料】
補修用の壁紙・ジョイントコークA(コーキング剤)
ジョイントコークAは、クロス職人がよく使用している商品名である。ベトツキがない塗りやすいアクリル系コーキング剤で、壁紙や水性塗料との接着性に優れている。
高耐湿性なので、水分による壁紙の剥離を防止する効果もある。色は39色展開されているので、より壁紙に近い色合いに仕上げることが可能だ。
比較的大きな傷を部分的に補修する方法
【step.1】補修する傷周りに四角くカッターで切り込みを入れ、破れた壁紙の周囲を丁寧に剥がす。
【step.2】剥がした部分より一回り大きめの補修用壁紙を用意し、補修部分の上に貼り付ける。小さな傷であれば、表面の焼け具合を合わせるため、コンセントプレートの内側や玄関の靴箱の壁紙を切り取り、裏紙を丁寧に剥がして使用することをおすすめする。
※裏紙を剥がすのは、貼り付けた際に盛り上がらないようにするため。
【step.3】壁紙を上から貼り付けた後、ハケで撫でて空気を抜き、元々貼ってある壁紙(下)と補修用壁紙が重なったラインにヘラを当て、2枚の壁紙を同時にカットする。カッターを入れる前に、カットする部分に目印として縦横にマスキングテープを貼り、マスキングテープの真ん中をまっすぐにカットすると失敗がない。
【step.4】切りしろを取り除き、下側の壁紙も取り除く。この際、補修用壁紙の位置がずれないよう注意する。継ぎ目にローラーを使い、修復部分が壁に密着するよう丁寧に当てつける。はみ出したのりは、水を含んだスポンジを使いキレイに拭き取る。
【step.5】下地がカッターで切れているので、ジョイントコークAを塗っておくと後から割れて目立つのを防げる。部分的に壁紙がめくれて密着していない場所があれば、同様にジョイントコークAを使い貼り付けて完成だ。
コーキング剤でうまく汚れを隠す方法
1円玉程度の小さな汚れやシミであれば、ジョイントコークAではなく、ジョイントコークMの使用がおすすめだ。ジョイントコークAは接着力が強いため汚れがつきやすい。
一方ジョイントコークMは、粘着力がジョイントコークAほど強くないので、上から塗るような補修にフィットする。
べったり塗ると光沢が出て目立ってしまうので、点を重ねるイメージで壁紙の模様と凹凸を再現するように塗っていく。指や布を使って上からぼかし、10分程度乾くまで待てば完成である。
まとめ
壁紙は2~3年経過すると、汚れや傷がつくものだ。汚れは定期的な清掃である程度解決できるが、今回紹介した傷がついた場合の補修方法は知らない場合が多かったのではないだろうか。
壁紙の一般的な寿命は6年といわれているので、10年以上経過しているなら全面貼替えが理想だろう。それまでは、貼替えを待つだけではなく、こまめに補修・修復し、室内を美しく保ちたいものである。