ドア蝶番の不具合の原因と調整・交換方法を解説
ドアの蝶番は、通常ドアに隠れてその存在さえも忘れがちですが、ドアの開閉機能は蝶番によって保たれています。
言い換えれば、ドアは蝶番がなければただの板でしかなく、ドアとしての機能がなくなるのです。
ドアの要となる大切な蝶番ですが、長年の使用によって不具合が発生することがあります。
ここでは、ドア蝶番の不具合の原因や調整・交換の方法などを解説します。
蝶番に不具合を感じたら早めに対処しよう!
ドアの開閉がしにくい、ドアの開閉時にキーキー音が鳴る、ドアが少し下がっているといった不具合はありませんか?
蝶番は頑丈な金属でできていますが、長年の使用によって油切れを起こし錆が発生したり、金属疲労によって破損したりすることがあります。
ドアの開閉時に違和感がある場合は、蝶番のチェックをして早急に対処することをおすすめします。
放置しておくと益々ドアの開閉が困難になり、ドアやドア枠・床などを傷めてしまいます。また無理に開け閉めした際に怪我につながることもあるので注意しましょう。
蝶番に不具合が発生する原因
蝶番に不具合がある場合、その主な原因は以下のようなことが考えられます。
・ネジの緩み
長年ドアを開閉しているうちに、蝶番のネジが緩むことがあります。乱暴に開閉するとさらにネジが緩んでしまいます。ネジが緩むとドアの固定位置が異なってくるため、開閉がしにくくなったり、開閉できなくなったりします。
・錆付き
ドアの開閉が重い、開閉時にキーキーと不快な音が出るといった場合、油切れを起こし蝶番が錆びてしまった可能性があります。
(ドア開ける瞬間が重い、閉める瞬間が重い場合は蝶番の錆が原因ではなく、ドアやドア枠の歪みが原因です。)
・破損や摩耗
金属でも長時間繰り返し荷重がかかると、集中して負荷がかかる部分に亀裂が生じやがては破壊してしまいます。
この現象を金属疲労といい、ドアの蝶番にも起こることがあります。具体的には蝶番の心棒が歪んだり、羽の部分が折れたりします。
また、金属同士が接する部分が長年の開閉によって擦れて摩耗することもあります。
蝶番の基本的な知識・構造など
蝶番とは、その形状が蝶々に似ていることがら「蝶番(ちょうつがい)」と呼ばれるようになりました。「番(つがい)」は雄と雌など2つのものが組み合わさって一つのものになることをいいます。
建築業界では略字の「丁番(ちょうばん)」が使用されています。英語ではHinge(ヒンジ)。
最も多く使用されているのは平蝶番と呼ばれ、上の画像のように2枚の羽と、その羽を繋ぐ中心のピン(軸)で構成されています。
ドアに蝶番を取り付ける場合は、高さが2メートルまでのドアの場合は上下に2個、2メートル以上あるドアの場合は3個の蝶番を設置することが基本になっています。蝶番はドアの大きさや重量によって適切な蝶番を選ぶ必要があります(重量のあるドアには開閉がスムーズに行えるようにベアリングの入った蝶番を使用します)。
2個の場合は上下になるべく離して取り付け、3個以上の場合は均等に取り付けます。
蝶番の素材は、ステンレス・アルミ合金・真鍮・鋼・樹脂などがあります。
蝶番の調整方法
ドアの蝶番に不具合が発生した場合の自分でできる調整方法をご紹介します。
ドアの開閉時の異音には注油を!
ドアを開け閉めするとき、キーキー音がする場合は、潤滑剤を注入します。
蝶番に最適な潤滑剤は蝶番用グリースです。
蝶番を外さずに油を注入するにはグリーススプレーが便利です。蝶番の支柱部分の隙間から心棒にかかるようにスプレーします。その後ドアを開閉してグリースを心棒に浸み込ませるようにします。
※グリースは潤滑剤の一種ですが潤滑油に増ちょう剤を配合し、一般的な潤滑油よりも粘度が高く流動性が低い半固体・半流動体にしたものです。耐荷重性が高く飛散や漏洩が少ないのが特徴。
調整機能付き蝶番の調整方法
上図の蝶番のように、多くのネジが付いているものは、調整機能付き蝶番です(三次元調整蝶番と呼ばれている)。サイズの合ったプラスドライバーを用意しましょう。
〈左右の調整方法〉
この図では見にくいですが三次元調整蝶番は、ネジ横に左右調整と表示されています。
ドアの取っ手側の先端の上部がドア枠と擦れる場合は、左右調整ネジの中央にある固定ネジを緩め、調整ネジをドアの位置が蝶番側に寄るように(時計の針と逆方向に回す)調整します(下部がドア枠と擦っている場合は下部の蝶番を調整する)。
左右調整ネジはドア全体を左右に2.5mm程度調整することができますが、あまり強くネジを回すとネジ山が潰れて蝶番の交換が必要になるため注意しましょう。
ドアの開閉やドア枠との隙間を確認してから、緩めた固定ネジを締め直します。
〈前後の調整方法〉
ドアが前後にずれた場合の調整は前後調整ネジで調整します。前後調節ネジ横の固定ネジを緩め、ドアを前に調整したい場合は時計回りに回し、後退させる場合は時計の逆回りに回します。前後に2mm程度調整可能です。
〈上下の調整方法〉
ドアの下部分が床に擦れる場合は、蝶番の支柱部分の上または下にある上下調整ビスを回して調整します(蝶番によっては支柱にカバーをしているものがあり、カバーを外して調整する)。
ドアを上に持ち上げる場合は時計まわり(右まわり)に回します。上下5mm程度調整可能です。
調整機能がない蝶番の調整方法
調整機能が付いていないタイプの蝶番は、全てのネジが蝶番を固定するためのネジになっているため、ドアを上下・左右に微調整することはできません。
そのため調整が必要な場合は専門業者に依頼することをおすすめします。
ドアが下にずれて床と擦れる場合、調整機能なしの蝶番でも応急的な処置で改善する場合があるのでご紹介します。
①下部に付いている蝶番のドア側のネジを緩める
②ドアと蝶番の間に1mm程度の厚紙を挟みネジを締め直す。
この方法では改善されない場合もあります。また、改善された場合でもできるだけ早く専門業者に依頼してきちんと調整してもらいましょう。
蝶番の交換方法
蝶番自体に劣化や破損が見られる場合は、蝶番の交換が必要になります。
蝶番の交換に必要な工具はプラスドライバー、埋め木の際の木材(割りばしでも可)・接着剤・金槌・カッター、さらに床などに傷を付けないようにマットなどの敷物を用意しましょう。
ドアの外し方
蝶番を交換するためには、まずドア自体を外さなければなりません。
ドアに採用されている蝶番の種類によって、ドアの外し方が異なります。蝶番別のドアの外し方は以下の通りです。
尚、ドアは重いので一人で作業するのは困難です。ドアを外す前に床などを傷付けないように敷物などで養生して二人で作業するようにしましょう。
〈抜き差し蝶番・旗蝶番〉
抜き差し蝶番とは、その名の通り抜き差しができる蝶番のことで、旗のような形状をした旗蝶番も抜き差し蝶番の一種です。
ドアを開けた状態で持ち上げるだけでドアを外すことができます。
〈儀星(ギボシ)蝶番〉
儀星蝶番とは、蝶番の支柱部分に儀星の付いた軸芯が入っている蝶番です。
儀星の付いた軸芯を抜くとドアを外すことができます。
〈解除ボタンの付いた蝶番〉
蝶番によっては、ドアを持ち上げることもなく蝶番に付いている解除ボタンを押すだけでドアが外れるようになっているものがあります。
ドアを外した後は、ドア側とドア枠側の全ての蝶番の取り付けネジを外し既存の蝶番を外しします。
蝶番の取り付け方
新しい蝶番を取り付ける前に、ネジ穴が広がってネジが十分に効かない可能性があるため、ネジ穴の埋め木を行います。
埋め木はメーカーによって交換用蝶番に付属されていることもありますが、ここでは割りばしを使用した埋め木の方法と、蝶番の取り付け手順をご紹介します。
①割りばしをネジ穴に入るように細く削り、接着剤を付けネジ穴に埋め込み(金槌で軽く叩くとしっかり入る)、飛び出した部分はカッターで切り落とす。
②ドア側・枠側に新しい蝶番を取り付ける。
➂蝶番の種類によって、ドアを外した方法の逆で(ドアを持ち上げて外した場合はドアを持ち上げて軸芯を入れる)ドアを取り付ける
④ドアを開閉してみて、ドアがドア枠に当たったり、ドアの隙間がどちらかに偏っていたりする場合は調整ネジで調整する。
蝶番の調整や交換は難しい!?
前項でもご紹介したように、調整機能付き蝶番の場合はドライバーだけで調整することができますが、調整機能の付いていない蝶番の場合は簡単に調整することはできません。
ドアの不具合の原因がネジの緩み程度ならばネジを締め直すだけで不具合が解消される場合もありますが、ネジの緩みでない場合は他の原因を特定しなければなりません。
また、ドアの開閉がしにくくなった原因は蝶番だけにあるとは限らず、ドアやドア枠の歪みなどが原因かもしれません。
その場合はドアやドア枠そのものを調整しなければなりません。
素人では難しいため、ネジを締め直しても、症状が改善されない場合は専門の建具工事業者に依頼しましょう。
蝶番の交換はDIYでも可能ですが、ドアはかなり重いものです。
ドアを外す作業や蝶番を交換した後に再度ドアを取り付ける作業は一人ではなかなか困難です。
床や壁を傷付けないためにも、やはり専門の業者に依頼した方が安心でしょう。
まとめ
ドアの蝶番は、いわば「縁の下の力持ち」的な存在です。
全く目立たず普段は気にもかけてももらえませんが、ドアを陰で支えドアの機能を維持しているのです。
ドアはスムーズに開閉できることが当たり前だと思っていますが、それは蝶番が健全であるお蔭といえます。
最近ドアの調子が悪くなった、開閉しにくくなったと感じることがあったら、蝶番をチェックしてみてください。もしかしたら、蝶番が疲れ果てているかもしれません。
蝶番にも適切なメンテナンスが必要です。定期的に錆や油切れなどのチェックをおすすめします。